Watson搭載の「AI電子黒板」登場、会議のムダを指摘する見張り役にIBM World of Watson 2016(1/2 ページ)

IBMの年次イベント「World of Watson」で、リコーがIBMの人工知能「Watson」を組み込んだ電子黒板を披露。他にもWatson IoTの事例を多数紹介している。同社が目指しているのは、WatsonがIoTによって、全てのモノに組み込まれる世界なのかもしれない。

» 2016年10月27日 08時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 「今日も一日会議だらけ。疲れるし、どうにかならないの?」

 ビジネスパーソンが会議に費やす時間は想像以上に多い。管理職ともなれば、1日の半分くらいが会議という人もいるし、一生涯で会議に費やす時間は約3万時間とも言われている。仮に1日8時間働いたとして、約10年間に相当すると考えると、いかに大きな数字かが分かるだろう。

 とはいえ、人生の10年を占める“会議”が生産的な時間かは人による。議事録を忘れたり、決めるべき事項を忘れて会議を終えたりと、せっかくの時間が無駄にしてしまったことはないだろうか。しかし今後は、人工知能がそんな無駄な会議を“撲滅”してくれるかもしれない。

 IBMのユーザー向け年次カンファレンス「IBM World of Watson 2016」では、精密機器大手リコーが開発している、IBMの人工知能「Watson」と連携する電子黒板が披露された。

自動で議事録、翻訳も――電子黒板が会議のアシスタントに変身

photo リコーアメリカ シニア・バイスプレジデント モナ・アブタレブ氏

 人間の話し言葉(自然言語)を解析して理解できる「Watson」。Watsonを電子黒板に組み込むことで、電子黒板が、会議を支援する“アシスタント”に変身するという。

 「電子黒板を音声で操作できるようになるほか、電子黒板に投影した映像や資料、会議中の議論や電子黒板への書き込みなどをWatsonが認識し、自動で議事録を作成してくれます。電子黒板と言うと、複雑な操作が必要なものだと思う方が多いかもしれませんが、Watsonの力を借りることで、非常に直感的かつインタラクティブな操作が可能になります」(リコーアメリカ シニア・バイスプレジデント モナ・アブタレブ氏)

 例えば、電子黒板に向かって「リタ(AIの名前)、スライドをめくって」と言うと画面が切り替わり、「リタ、会議を終わらせてちょうだい」と言うと、会議で確認すべき事項の振り返りや議事録、そして次回の会議までの“宿題”が送られてくるという仕組みだ。会議の情報を蓄積することでリタは成長し、ゆくゆくは会議での意思決定を支援できるようになるという。

photo Watsonを組み込んだ電子黒板
photo 参加者の発言を表示してくれる

 また、参加者の発言をリアルタイムで翻訳することも可能で、海外との会議では、世界中で複数の電子黒板を連携できるという。発言内容をWatsonが分析し、意思疎通のミスを防ぐのがその狙いだ。

 「技術が発達して仕事の方法は劇的に変わっています。リタを使うことで会議がより効率的になり、内容を忘れることもなくなるでしょう。しかし、これはリコーにとっては第一歩。組織内で人が動くようなイメージで、情報を活発に動かせるようにすることで、企業の生産性を高めていくことが、私たちの目標です」(モナ氏)

 Watsonと連携した電子黒板は現在、「パイロット版を複数の企業で使ってもらっている」(リコー)とのことで、2017年1月から商用展開することを目標に準備を進めているという。

photo 複数の電子黒板を連動させることも可能。離れた拠点間での会議で役に立つ機能だ
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