米ベンチャーとIBMが人工知能「Watson」を組み込んだ電気自動車「Olli」を開発。IBMの年次イベントで走行デモを行っていたので、実際に乗りこんでみた。Olliとのコミュニケーションはスムーズで、自動車とコミュニケーションを取るようになる時代も近そうだ。
自動車に人工知能(AI)を使う、と言うと「自動運転」を思い浮かべる人が多いと思うが、自動運転ではなく、人とのコミュニケーションにAIを使おうという動きもある。米スタートアップ企業のLocal Motorsが開発した自動運転バス「Olli」だ。
OlliはIBMの人工知能「Watson」を搭載しており、乗客に目的地を聞いたり、目的地周辺の観光スポットやレストラン情報を教えてくれたり、Olliの自動運転の仕組みを教えてくれたりと、乗客と会話しながら“バスガイド”の役割を果たしてくれるという。
米国ラスベガスで開催されたIBMの年次カンファレンス「IBM World of Watson 2016」では、実物のOlliが展示され、ホテル内を走行させるデモを行っていた。
Olliは12人乗りの電気自動車で、車体や部品の大半を特注の3Dプリンタで作成しており、車重は245キロと非常に軽い。3Dプリンタで部品などを製造してから「約2週間で組み上げた」(IBM)という。車両全体に埋め込んだ30個以上のセンサーを使って自動走行を行う。
車内にはOlliと会話するためのタブレットが設置されており、専用アプリケーションを通じて話しかけると、答えてくれる仕組みだ。Speech to Text(音声認識)、Natural Language Classifier(自然言語解釈)、Entity Extraction(固有名詞抽出)、Text to Speech(音声合成)の4つのAPIを導入している。目的地までのベストな道や交通状況、天気も学習しているため、自然な会話を楽しめるという。
講演で行われたデモでは「近くでやっているショーに連れてって」と話しかけると、Olliが「今夜は20度まで下がるから、ジャケットを持ってきてくださいね」と答えていた。イベントが行われているラスベガスの周辺状況まで把握しているため、言葉に主語を入れる必要もなくなる。これらの情報を学習させるには「3カ月ほどかかった」(IBM)そうだ。
既に2016年6月からワシントンDCの公道で実証実験が始まっており、マイアミ・デイド郡やラスベガスでも試験運行を行う準備を進めている。
「今後自動運転車が普及すれば、運転手なしで無人走行する車も増えるはずです。その際にコミュニケーションを取る相手としてWatsonは向いています。ゆくゆくは乗客個人を認識して、ニーズや好みを反映した情報を提供することもできるようになるでしょう」(IBM)
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