「障害の復旧」と「問題解決」を勘違いする人たち失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(3/3 ページ)

» 2017年03月06日 08時00分 公開
前のページへ 1|2|3       

「障害の復旧」と「問題解決」は別のプロセスで扱う

 そこで、サポート担当者は入電のあった事象が復旧するために対応するのですが、会話例でお分かりの通り、運用担当者は、いつの間にか障害の復旧よりも「原因の究明」を優先してしまい、インシデントへの対応が二の次になってしまっています。

 これは、火事が起きて消防車が向かっているのに「火元の原因が分かるまで消火を待ってくれ」と言っているようなものです。インシデントの全てがそんな“火事”のような緊急性の高いものではありませんが、対処のプロセスはその緊急度には関係なく共通のものです。

 ITILでは、そのような原因の究明と対処は、インシデント管理とは別の「問題管理プロセス」として扱います。別のプロセスになるのは、求められる成果が異なるためです。インシデント管理では、問題にできるだけ早く対処することが要求される一方、問題管理では、問題を根本的に解決することが要求されます。

 ITILを参考にしている企業は、そのように段階を分けて対処しますから、利用者側がそれを知らないと、しばしば、会話がずれてしまうのです。

photo インシデント管理と問題管理の違い

 そのようなことが起こらないように、ソフトウェアの提供メーカーは、製品の保守契約を締結する際に、保守の内容や利用法について説明しています(または、そのような説明書をお送りします)。

 ユーザー企業のIT担当者が「ベンダーがなんでもやってくれる」と思っているようなケースでは、そういった説明を軽視してしまう傾向にありますが、保守窓口が提供するサービスが何で(What)、どのようにそのサービスを利用するのか(How)、という点を運用に入る前によく確認しておくことが必要でしょう。

 ……えっ、トリセツなんていちいち読むタイプじゃない? いやいや、お仕事で使うソフトウェアに関わることですから、大事なところはしっかり読んで確認しないといけませんよ。

著者紹介:吉丸新一郎

photo

 日本ヒューレット・パッカード株式会社 プロフェッショナルサービス コンサルタント / シニアアーキテクト。自社のエンタープライズ向けソフトウェア、特にハイブリッドクラウド管理、データセンター運用自動化製品を専門とした導入コンサルティングを担当。

 製造業システム子会社でのデータセンター事業企画・運用、ベンチャー企業での新規事業開発および運用を経て、ソフトウェア利用者の立場をサプライヤーの立場に変え現業に従事、現在に至る。

 趣味は音楽鑑賞(ジャズやクラシック)や歌舞伎やオペラの観劇など。旅行が好きで、食べ歩きが得意ジャンル。

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ