そこで、サポート担当者は入電のあった事象が復旧するために対応するのですが、会話例でお分かりの通り、運用担当者は、いつの間にか障害の復旧よりも「原因の究明」を優先してしまい、インシデントへの対応が二の次になってしまっています。
これは、火事が起きて消防車が向かっているのに「火元の原因が分かるまで消火を待ってくれ」と言っているようなものです。インシデントの全てがそんな“火事”のような緊急性の高いものではありませんが、対処のプロセスはその緊急度には関係なく共通のものです。
ITILでは、そのような原因の究明と対処は、インシデント管理とは別の「問題管理プロセス」として扱います。別のプロセスになるのは、求められる成果が異なるためです。インシデント管理では、問題にできるだけ早く対処することが要求される一方、問題管理では、問題を根本的に解決することが要求されます。
ITILを参考にしている企業は、そのように段階を分けて対処しますから、利用者側がそれを知らないと、しばしば、会話がずれてしまうのです。
そのようなことが起こらないように、ソフトウェアの提供メーカーは、製品の保守契約を締結する際に、保守の内容や利用法について説明しています(または、そのような説明書をお送りします)。
ユーザー企業のIT担当者が「ベンダーがなんでもやってくれる」と思っているようなケースでは、そういった説明を軽視してしまう傾向にありますが、保守窓口が提供するサービスが何で(What)、どのようにそのサービスを利用するのか(How)、という点を運用に入る前によく確認しておくことが必要でしょう。
……えっ、トリセツなんていちいち読むタイプじゃない? いやいや、お仕事で使うソフトウェアに関わることですから、大事なところはしっかり読んで確認しないといけませんよ。
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