現在、ビッグデータの領域で、ブロックチェーンの適用が期待されているのは、情報セキュリティにおけるアイデンティティー、アクセス管理の領域だ。
2017年3月20日、米IBMはカナダ・トロントのSecurity as a Service(SECaaS)プロバイダーであるSecureKey Technologiesと共同で、ブロックチェーンをベースとするデジタル認証/属性共有ネットワークを構築すると発表した(ニュースリリース)。
カナダでは、中央銀行であるバンク・オブ・カナダや、モントリオール、トロント、カルガリー、バンクーバーの各金融センターを中心に、仮想通貨としてのブロックチェーン導入や活用に向けた取り組みが行われてきた。
2016年10月には、モントリオール銀行(BMO)、CIBC、デジャルダン、カナダロイヤル銀行(RBC)、スコシアバンク、トロント・ドミニオン銀行(TD)といったカナダの大手銀行が、金融ビッグデータの要にもなるデジタル認証へのブロックチェーンの適用を目的としたエコシステムが立ち上がり、IBMとSecureKey Technologiesの実証実験に参画している。
ブロックチェーン技術を利用したデジタル認証ネットワークは、金融のみならず、医療、エネルギー、公共インフラなど、厳格なアクセス管理が要求される非金融分野への横展開が有望なプラットフォーム・ソリューションだ。デジタル認証は、ビッグデータ、人工知能(AI)、モノのインターネット(IoT)といった新技術の適用、連携においても、共通基盤の役割を果たすため、今後の商用化に向けた動きが注目される。
日本国内でも、Fintech(金融×IT)領域を中心に、ブロックチェーンを利用したデジタル認証ソリューションにフォーカスするスタートアップ企業が出てきているが、商用化、国際標準化に向けては、ユーザー企業や顧客、規制当局などとのエコシステムによるユースケースの検証やベストプラクティスの創出が欠かせない。今回紹介したオーストラリアやカナダの取組も参考になるだろう。
次回は、スマートシティにおけるビッグデータの社会実装について取り上げる。
宮崎県出身、千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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