電子レシートやIoTショッピングカートーートライアルCIOが語る、スーパーマーケットの未来とは?(2/3 ページ)

» 2017年04月24日 08時00分 公開
[寺澤慎祐ITmedia]

売り場の「中」で、顧客とどうつながるか

 トライアルが強化しているのはメーカーとのつながりだけではない。ユーザーとのつながりを強化するための施策も数多く展開している。特に店舗の中でどうユーザーにアプローチできるかに重点を置いているという。

 「トライアルは店舗の売り場でお客さまとつながる新たな“リテールメディア”を展開しようと考えています。これは新たなお客さまとのコミュニケーション手段や、新たな商品のプロモーション手段であり、マス広告の代替になり得るでしょう」(西川氏)

 店舗外でテレビやタブレット、スマートフォンなどを通じてトライアルの情報を集めて来店したユーザーに、店舗内ではKIOSK端末、タブレット付きカート、レシートクーポンといった仕掛けでさまざまな情報を与えていく。特にレシートクーポンでは分かりやすい成功事例が出たという。

 レシートクーポンは、レシートに次回来店時に使える特定商品の割引情報などを印刷して来店頻度を高める試みだ。これは顧客全員を対象とした値引きやポイント付与を行う従来の方法とは異なり、特定の顧客にコストの効率の良いクーポンを配布する「ピンポイントマーケティング」と呼ばれる手法を用いている。

photo レシートクーポンの例

 「8月から2カ月かけて、とある商品でレシートクーポンを実施したところ、約111万人のクーポン対象者のうち、62万人にクーポンを発行しました。そのうち1.4%の8574人がクーポンを利用しました。クーポンを利用した売上高は約1200万円です。たったの1.4%と思われるかもしれませんが、8574人のうち約4割はそのカテゴリーの商品を新たに購入したわけで、売上を考えれば非常にROIが高い施策と言えます」(西川氏)

400万人の顧客を50のグループに

 トライアルがレシートクーポンのように、商品に興味を持ちそうなユーザーをピンポイントで探せるのは、クラスタ分析を使って約400万人の顧客を50のグループに分けているためだという。

 「店舗で効果的な活動をするには、年齢層やペルソナのようなイメージではなく、データによる顧客分析を行って反応率が高いターゲットグループを作る必要があります。それぞれ和洋バランス型、洋食スタイル、料理好きな堅実型、パートタイムの節約型、かんたん料理で晩酌型、健康意識のこだわり型、できあい品で晩酌型といった名前を付けています」(西川氏)

photo 顧客クラスタリングの例

 例えば、「抜かりないしっかり者の主婦」というカテゴリーは、基本的に家でご飯を作り、総菜や冷凍食品をサブで利用する人たちで、お買い得な大容量の商品を好んで買う傾向がある超優良顧客、といった具合だ。クラスタによってクーポンの反応率が5倍、6倍と異なることもあるため、反応率によって次回施策のクーポン配布対象を変えるといったPDCAサイクルを細かく回しているそうだ。

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