さらに斎藤氏は、AIの進化がITの常識を大きく変えるパラダイムシフトを引き起こしていることにも言及した。
「最近のAIを搭載したロボットは、作業の手順を教えて、品質基準や目標値を設定すると、業務を達成できるように自らが仮説と検証を繰り返しながらスキルアップをしていく」と説明。続けて、現実世界、つまりフィジカルワールドの出来事がセンサーによってデジタルデータとして集められ、サイバーワールドのビッグデータとなってAI技術で解析され、そこからさまざまな価値ある知識が取り出されていると話す。
「その知識から、さまざまなアプリケーションやサービスが生み出され、それが再び現実世界を動かしている。それが今の社会」(斎藤氏)
このサイクルは、社会の中に確実に埋め込まれつつあり、この一連の仕組みは「サイバーフィジカルシステム(CPS)」と呼ばれている。
CPS化する社会において、今後、どのようにITを活用していけばよいのだろうか。そのキーワードとなるのは「デジタルトランスフォーメーション」だ。トランスフォーメーションとは「変換すると」「置き換える」という意味。デジタル化の進展で、何が何に置き換わるのだろうか。
これまでの社会は、“人間が仕事をすること”を前提に、その業務をいかに効率よく行うかといった目的でデジタル技術が活用されてきた。ところがAIやクラウドの普及といった技術の進化に伴い、「人間にしかできなかったことがどんどん減り始めている」と斎藤氏は指摘する。
人間が仕事をすることを前提とせずに、“機械が仕事をすることを前提に”仕事の手順を組み直すと、一体何が起こるのか。
「機械は飲まず食わずで文句も言わず働く。24時間365日、テクノロジーを使えば時間や空間、スピードといった概念が根本的に変わる。そうなると、100万円のコストが掛かる仕事が1万円でできるかもしれないし、1カ月かかっていた仕事が10分で終わるかもしれない。つまり、1割削減や3割向上といったレベルでなく、数十倍や数百倍もの改革、改善が実現できるかもしれない。それこそがデジタルトランスフォーメーションの本質だ」(斎藤氏)
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