Amazon Echoはなぜ、既存のビジネスを食い尽くすのかITによるビジネスの破壊と創造が始まる(3/3 ページ)

» 2017年05月22日 08時00分 公開
[下玉利尚明ITmedia]
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デジタルによる変化と崩壊が同時に進行

 デジタルトランスフォーメーションによって、ビジネスプロセスがデジタル化すると、他のデジタルビジネスとの組み合わせが容易になり、それによって新たな付加価値が創出されるという。

Photo ビジネスプロセスのデジタル化によって起こる変化

 「デジタルトランスフォーメーションによって、時間や地域、規制を超えた新たな産業やビジネスが次々と生み出されている。同時に既存の産業やビジネス価値がどんどん破壊されている」(斎藤氏)。

 CPSによってデジタルトランスフォーメーションが引き起こされ、一方では、デジタルトランスフォーメーションによる破壊、「デジタルディスラプション」が同時に進行するという変化が今、起こっているというわけだ。

 これまでは、デジタルトランスフォーメーションやデジタルディスラプションに対応するには、PCの購入やサーバの設置、データセンターの活用といったIT機器を導入するためのコストが掛かっていた。

 ところが、今ではクラウドでアプリケーションを組み合わせるだけで、簡単に新たなシステムを構築して実行できる環境がある。「サーバレスで必要なシステムを活用できるようになった」(斎藤氏)からだ。

 加えて、ITが「アンビエントな存在」になりつつあるというのが斎藤氏の見方だ。これは「ITが環境に溶け込み、目には見えにくくなっている」(斎藤氏)ということで、社会の中にセンサーが知らず知らずのうちに埋め込まれ、さまざまな事象がデータ化されていくと、企業における経営判断などはもちろん、日々の事象も「経験や勘で判断するのではなく、デジタルデータという事実に基づいて決めていく社会になる」という。

「思想としてのIT」という考え方の重要性

 こうしたITを取り巻く環境の変化に伴い、ITシステムの開発手法も変わってきているという。代表的なのがDevOpsだ。世の中の変化に即応できるITの仕組みを作っていなければならないとき、「開発しながら運用していく取り組みも進めていかなければならない」という。

 こうした時代の変化に伴い、ITという言葉に対する考え方も少しずつ変化している。これまでITは、“手段や道具”として語られることが多かったが、昨今では「道具としてのIT」「商品としてのIT」「仕組みとしてのIT」「思想としてのIT」という新たな概念が生まれているという。

 このうち「思想としてのIT」について斎藤氏は「ITはトレンドを進化させ、われわれの常識を変え、考え方にも大きな影響を与える。すなわち思想としての役割をITが持っている」と指摘した。

 そして、「思想としてのITで最新トレンドやテクノロジーを理解し、新たなビジネスモデルを構築し、ITを最大限に生かして効率の良い仕組みとしてのITを作り、道具としてのITで利便性を最大限に高める。それがITでビジネスを組み立てるということ」と述べた。

Photo 商品としてのITの作り方

ITを活用した「失敗しない」新規事業の立ち上げ方とは

 斎藤氏は、これからITを活用して新しいビジネスを立ち上げていく上でのキーワードとして「共創」、つまり「co-creation」挙げる。ビジネス環境が目まぐるしく変化する中では、少し前の常識がすぐに陳腐化することも少なくない。そうした社会では「永久不滅の成功モデルを描くことはもはや不可能」というわけだ。

 「今までコツコツと積み上げてきてノウハウがこれからも通用するのか」「新しいビジネスモデルを作ったが環境があっという間に変わってしまわないか」――。今の社会には、そうした不安が常にあり、社内のリソースだけで新しいビジネスを構築するのが現実的ではなくなっているという。これからの企業は、積極的に外部の企業とダイナミックに協業し、事業の変革を進めていく必要があり、そこで「共創」の必要性が高まってくという。

Photo 共創の3タイプ

 最後に斎藤氏は、自身が新規事業の立ち上げに関わってきた経験を踏まえ「絶対に失敗する新規事業」について、自身の考えを述べた。

 意外にも「自分たちに『何ができるか?』を前提に新規事業を立ち上げた場合は多くが失敗する」という。「自分たちには今、こういう顧客がいる」「今、こういう商品がある」「今、こんなスキルがある」という考えから新規事業を立ち上げるとうまくいかないというのだ。

 その理由は、「自分たちが『できること』に都合がいいマーケットを勝手に妄想して、自分たちに都合がいいように振る舞ってくれる顧客を勝手に考えてしまうから」だという。つまり、裏付けがないということだ。

 「典型的な例が『この市場は100億円あります。このうち1%が取れたならばこのビジネスはうまくいく』といった想定。なぜ『1%も』取れるのか、その裏付けがない。そんな事業計画に顧客などいない。

 これはIoTで何か新規企業を始めようという考え方と同じで、そんなやり方では失敗する。顧客が本当に何に困っているのか、その現場で困っている人の名前、顔、役職、実際やっている仕事を具体的に把握しているか? まずはそこから」と指摘した。

 そして、「顧客の困ったを解決する、社内であれば自分たちの困ったを解決する、そこに積極的にITを活用すれば、非常に効率よく魅力的な新規事業を立ち上げることができるだろう」と話し、勉強会を締めくくった。

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