「これは難しい……」と感じた皆さん。その理由はどこにあるのか、少し考えてみましょう。こうした要求に速やかに応えるためには、取引先マスターが少なくとも次のような機能を備えている必要があります。
データベースに明るい方なら、1は言わずもがな、マスターである以上、各データに対してユニークな「キーコード」を求めるのは当然と考えるかもしれません。
しかし、東京商工リサーチ(TSR)が2015年に実施したアンケートでは、回答した5018社のうち約6割が、そもそも取引先を管理する「取引先コード」の類いを一切持たず、約1割が部門やシステムごとに異なる取引先コードがあることが明らかになっています(出典:「マイナンバー・法人番号制度に関するアンケート」東京商工リサーチ、2015/7)。
また、このときのアンケートには質問項目がなかったものの、統一の取引先コードを持つ28%の企業においても、取引先マスターの現場を見る限り、資本系列をリンクしている割合は極めて少ないと思われます。
今回例に挙げた要求には、まだ面倒な点があります。それは、取引金額トップ100の企業の「子会社」であること――つまり、取引のない見込み客について問われているという点です。取引先であれば、与信を通す際などにさまざまなデータが登録されますが、見込み客についてもデータを用意している企業は、残念ながらまだ少ないでしょう。
実は、マーケティング先進国といわれている米国でさえ、長きに渡って見込み客データの属性はないがしろにされていました。以下の図は、TSRのグローバルアライアンスパートナーであるDun & Bradstreet(ダン&ブラッドストリート)が、500社以上のマーケティング部門に行ったアンケートの結果です。
この図が示す通り、米国のマーケティングデータにおいても、7割以上のレコードにおいて、売上高や従業員数、業種の属性が欠落しているのです。
昨今、米国の企業向けマーケティングでは、“Account Based Marketing”という、あらかじめターゲットとなる企業を決め、その企業に対してマーケティングリソースを集中させる施策が注目を集めていますが、基本属性を欠いたデータが多い状況では、そもそも狙うべき顧客を定義することもできません。
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