青森県漁連、AIを活用した密漁監視システムで、陸奥湾のナマコの漁業被害を防止

青森県漁業協同組合連合会が、NECフィールディングの「密漁監視システム」を導入し、陸奥湾におけるナマコの密漁を24時間365日監視する体制を整えた。不審船かどうかを、NECのAI技術「RAPID機械学習」で自動判別する。

» 2017年06月27日 11時00分 公開
[ITmedia]

 青森県漁業協同組合連合会(青森県漁連)は、近年増加中の陸奥湾におけるナマコの漁業被害を防止するため、AIを活用した「密漁監視システム」を導入、4月から稼働した。

 システムを構築したNECフィールディングが、24時間365日体制で陸奥湾の密漁を監視するとともに、システムの構築、運用や保守サービスも提供する。機器にトラブルが生じた場合は、最寄りの拠点よりカスタマエンジニアが現地に駆け付けて復旧対応するという。

Photo 青森県漁業協同組合連合会が導入した「密漁監視システム」の概要

 同システムでは、陸奥湾内を取り囲むように高解像度な監視用サーマルカメラを15台設置。カメラの画像は監視センターで一元管理し、AIがカメラの画像から漁船か不審船かを自動的に判断する。密漁船と判断されれば、県漁連や各漁協の組合員のスマートフォンにアラートが発信される。

 監視カメラ画像の自動判別には、NECが開発したAI技術「RAPID機械学習」を活用している。RAPID機械学習は、ディープラーニング技術を搭載し、事前に手本となるデータを読み込むことで傾向を自動的に学習するため、データの分類や検知、推薦などの高精度な判断が可能となる。また、分析エンジンの高速化と軽量化の両立を実現しており、大規模なマシンリソースを必要とせずにサーバ1台から分析処理ができる。

 陸奥湾は国内でも有数の漁場で、青森県全体の漁獲高454億円(2016年度)のうち、254億円はホタテが占める。そのホタテを養殖する上で、ナマコは、ホタテの排せつ物を食べ、陸奥湾の浄化に貢献する重要な存在だ。だが、中華料理での高級食材、あるいは漢方薬の原料として高値で取引されることから密漁の横行を招いており、青森県漁連によると、推定で年間1億円から2億円の被害が出ているという。

 これまで、陸奥湾を漁場とする各漁協は、青森県や地元警察、青森海上保安部などとも連携して、陸上や洋上の巡回監視を行ってきたが、一日中海岸を監視することは難しく、密漁者が出没する夜間の監視も負担が大きかった。そこで、少ない人数で効率的に監視できるシステムを探した結果、陸奥湾全体を監視する監視カメラネットワークの構築が可能な同システムの導入に至ったという。

 なお、NECフィールディングは、同システムの一般向け販売を6月26日に開始した。価格は、監視用サーマルカメラ、監視サーバ、録画ストレージ、AIサーバ各1台とネットワーク機器の最小構成、設計構築作業の組み合わせで1500万円(税別)から。機器の設置工事費と、運用開始後の保守および監視サービス費用は別見積もりとなる。

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