トラブルにも発展しがちな不動産投資の営業電話。読者の皆さんも受けたことがあるのでは。約9割が断られる状況の中、ならばと新規顧客向けの電話営業を全廃した不動産会社がある。
「もしもし、突然ですがマンションの経営などに興味はございませんか?」「いえ、特にないです」――ガチャ。
読者の皆さんは、不動産投資の営業電話を受けたことがあるだろうか。このように電話を突然切られてしまうことを業界用語で「ガチャ切り」と言うそうだ。トラブルにも発展しやすい電話営業だが、思い切って新規獲得のための電話営業を全廃した不動産会社がある。2010年に創業したベンチャー企業「Fan's」だ。
「別に電話がなくても、十分な営業活動はできていますよ」――そう語るのは、同社代表取締役の國師康平さん。投資用ワンルームマンションの開発、販売をメインに幅広く事業を展開しているとのことだが、同社ではどのような営業を行っているのだろうか。
Fan'sはもともと、ITで不動産業界にイノベーションを起こすことを目的に設立した企業だ。対面での接客対応や物件情報のやりとりがFAXであるなど、不動産業界は“アナログ”な業務が非常に多い。電話による営業もその1つだと國師さんは話す。
「不動産業界では、飛び込みや電話といった営業手法が一般的です。私たちはこの慣習を変えるため、不動産の仕入れから販売まで、全てWebで完結できるようにすることを目指しました」(國師さん)
同社では、AIがワンルームマンションを自動で査定してくれる、買い取りサービスの「HAYAGAI」を展開しているが、査定や商談をオンラインで行えるため、一般的な不動産仲介業者と比べて、プレイヤーの数やかかる労力が少ない。そのため「高く買い取り、安く売れる」というのが特徴だという。
そんな同社が、新規獲得の電話営業を廃止したのは2つの理由がある。1つは個人情報に対する規制の強化だ。昨今は個人情報保護法など、プライバシーに対する意識が高まっている。そのため、電話営業を行うために必要な情報が手に入りにくくなっている。
もう1つは電話営業における商談化率の低さだ。國師さんによると、電話営業は9割以上断られるのが普通だが、一方でそれを止められない事情もあるという。
「いわゆる“ガチャ切り”が多いのも事実ですが、詳細を説明すると興味を持ってもらえるお客さまもいます。会社に対する悪評が立つなどのリスクもありますが、運が良ければ、1日で数千万円が動くケースもあるため、電話営業を続けているのだと思います」(國師さん)
できるだけ断られないようにするためにはどうすればいいか……。そのためにFan'sは「集客」と「営業」を完全に切り分けた。
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