オムニチャネル時代のPOSに欠かせない3つの要素Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年08月28日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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POSの存在自体を否定した「Amazon Go」

 会見で説明に立ったウン氏および九嶋氏によると、HP ElitePOSの開発コンセプトは「これからのPOSにふさわしい機能、性能、美観」を兼ね備えていることだ。キーワードは「デザイン」「セキュリティ」「信頼性」の3つである(写真2、図2)。

Photo 写真2 米HPアジアパシフィック&ジャパン モビリティ担当ディレクターのダレン・ウン氏(右)と日本HP執行役員パーソナルシステムズ事業 本部長兼サービス・ソリューション事業本部 本部長の九嶋俊一氏(左)
Photo 図2 HP ElitePOSの開発コンセプト

 さて、この新製品に小売業の構造変化が映し出されていると言ったのは、まず同社の会見でも幾度も出てきた「オムニチャネル時代の到来」が挙げられる。

 一方、人手不足を背景に業務の効率化を図る狙いで、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどに「無人レジ」あるいは「セルフレジ」と呼ばれるPOSシステムが導入されるケースも出てきた。

 この2つの動きをどう見るか。店舗にとってはオムニチャネル時代への対応が「インテリジェント化」ならば、無人レジおよびセルフレジの導入は「自動化」なのかもしれない。

 ただ、最近ではPOSの存在自体を否定する動きも出てきている。レジがなく、商品を手に取ってそのまま店を出れば自動的にネット上で課金される仕組みの「Amazon Go」がそれだ。この開発を進める米Amazon.comは、このほど買収した高級スーパーチェーン店にこの仕組みを採り入れる計画だという。

 このAmazon Goは、IoT(Internet of Things)の仕組みや人工知能(AI)を駆使した最先端の技術に注目が集まりがちだが、真のイノベーションは小売店舗の在り方が大きく変わることにある。考えようによっては、これが本当のオムニチャネルの実現なのかもしれない。肝心なのは、もともとPOSが目指してきた小売業におけるリアルタイムマネジメントを一層進化させることである。

 では今後、小売業はどのような方向へ進んでいくのか。POSはどうなるのか。Amazon Goが理想的な仕組みだろうが、広がっていくのはやはり時間がかかりそうだ。従ってPOSの役割はまだまだ大きいだろうが、今後はインテリジェント化と自動化のそれぞれ、あるいは両方を融合した形の3方向へ広がっていくのではないか。いずれにしても従来のような箱型POS端末は徐々に姿を消していくだろう。

 筆者には、今回のHPの新製品がこんな小売業の構造変化を映し出しているように感じた。今回はPOSを巡る話だったが、企業にとってはこれが多様なデジタルビジネスにつながっていく非常に重要な動きだと考える。キーワードは先ほども挙げた「リアルタイムマネジメント」。これについては、またあらためて深堀りしたい。

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