CIOはデジタル変革にどう立ち向かうべきかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2017年10月02日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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デジタル化の目的によって異なるCIOの立ち位置

 一方、企業のデジタル戦略を推進するリーダー役として、かねて注目されているのがCDO(最高デジタル責任者)である。部門を横断して社内外のデジタルビジネスを統括することから、その仕事はCEOの領域であるビジネス戦略、CIOが担うIT、そしてCMO(最高マーケティング責任者)が担うマーケティングの3つを組み合わせたイメージだ。

 KPMGコンサルティングのCIO調査によると、企業組織内にCDO職か、その役割に相当する役職を設置しているかとの問いに対し、図3に示すように回答者の25%が「設置している」と答えている。一方で、69%が「設置していない」と答えていることから、企業のデジタル化への取り組みは実質的にCIOが担っているケースが多いといえそうだ。

Photo 図3 DOの設置の有無(出典:Harvey Nash/KPMG 2017年度CIO調査)

 ただし、CDOも2016年で18%だった割合が2017年は25%に伸長。とりわけ、IT予算が年間2億5000万ドル超の大企業では、2016年で36%だった割合が2017年では51%に伸びており、デジタル化の進展に伴ってCDOを設置する企業も増えていきそうだ。

 ちなみに、業種別でCDOを設置している割合が高いのは、放送/メディア46%、広告35%、小売32%、通信31%など。逆に低いのは、公益事業16%、製造18%、エネルギー18%といったところだ。ただし、広告はデジタルそのものが商品であることから、CDOの役割も他業種とは異なっているようだ。

 最後に、デジタル変革の課題についての調査結果を取り上げておきたい。図4は、デジタル化を成功させるうえでの最大の課題を聞いた結果である。それによると、「新技術を導入することの難しさ」「投資利益率(ROI)の達成」「適切な人材の確保」などを抑えて1位になったのは、「変革に対する抵抗」である。どうやら、この課題はこれまでのIT化でも、これからのデジタル化でも変わらないようだ。

Photo 図4 ジタル化を成功させるうえでの最大の課題(出典:Harvey Nash/KPMG 2017年度CIO調査)

 そこで、会見の質疑応答で、改めて「理想的には、企業はCIOとは別にCDOを設置したほうがよいのか」と聞いてみた。すると、松本氏は次のように答えた。

 「デジタル化する目的によって異なる。例えば、社内業務のプロセス改善や生産性向上が目的ならCIOがデジタルリーダーも兼ねてやるべきだ。しかし、新規事業の開拓や革新的な製品・サービスの開発が目的なら、それにふさわしい人材をCDOに据えて、CIOは基本的に関わるべきではない」

 同氏のこの見解は、CIOでさえも変革に対する抵抗勢力になってしまう可能性があるということだ。できうるならば、CIOはそれを心得たうえで、デジタル化についてはCDOをサポートする立場になるのが望ましい。なぜならば、CIOには先述したように全社的な観点からの明確な役割があるからだ。そして、CEOがそのCIOやCDOの後ろ盾になることも非常に重要である。このタッグを強力に組めれば、変革に対する抵抗へも解決策を見いだせるはずである。

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