日立、AIを活用したX線手荷物検査技術を開発、ディープラーニングで誤認防止も

X線手荷物検査で、AIによる安全性の自動判定を行う技術を日立が開発。個々の物品の安全性を材質、密度などから自動識別する。危険物の見落としを防ぎながら検査を効率化できるという。

» 2017年11月02日 19時45分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 日立製作所(日立)は、X線を用いた手荷物検査の際に、AIを活用して手荷物内の一つひとつの物品を認識し、安全性を識別する技術を開発した。

 同技術は、一見安全な物品でも、材質や密度が通常と異なり、改造や細工が疑われる場合は、目視検査を提案する。検査員は、安全な物品の検査に時間を取られず、AIから提案された危険性が疑われる物品の検査に集中でき、効率的かつ確実な手荷物検査が可能になり、検査の待ち時間を短縮できるという。

 日立では、同技術を適用したX線手荷物検査システムを試作し、スポーツや音楽イベントを想定した延べ60人の来場者に対する手荷物検査の実験を行った結果、全ての手荷物を目視検査する従来の方式に比べて、検査員が同じ時間内に検査できる手荷物の数が約40%増加したことを確認した。

Photo X線手荷物検査システムでの安全性識別イメージ

 この技術は、X線の透過量から物品の単位面積あたりの質量を推定し、X線撮影画像から物品が存在する領域を画素単位で網羅的に特定し、次にディープラーニングを活用して物品らしい形状を抽出する。複数の物品が接していても別々に認識が可能なうえ、物品らしい形状が存在する領域と、はじめに特定した物品の存在する領域との間に差異がないかを検証することで、物品の認識漏れも防げるという。

 また、危険物を誤って安全と判定しないために、「ディープラーニングを用いた、安全な物品の識別」と「物品の標準的な特徴を用いた、識別結果の信頼性検証」の2段階の安全性識別技術を活用。あらかじめ安全な物品をディープラーニングで学習しておくことで、抽出した画像が安全な物品か否か、そしてその種類を識別する。次に、識別した物品のX線画像から得られた材質、密度、大きさなどの特徴を、あらかじめ準備しておいた同じ種類の物品の標準的なデータと比較することで、識別結果の信頼性を検証する。

 日立は、空港、駅、公共施設、イベント会場などへの活用を見込んでおり、2018年度中に同技術を活用したX線手荷物検査システムの実用化を目指すとしている。

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