AIで新薬創出を加速 肺がんとIPFの創薬ターゲット発見へ――NIBIOHN、理研ら、省庁連携研究プロジェクトを開始

医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)、理化学研究所(理研)、科学技術振興機構(JST)は、「新薬創出を加速する人工知能の開発」を目指に「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」に基づく研究プロジェクトを開始。創薬ターゲットを推定するAIを開発し、創薬研究の活性化を目指す。

» 2018年08月10日 17時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

 医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN)、理化学研究所(理研)、科学技術振興機構(JST)は2018年8月9日、「新薬創出を加速する人工知能(AI)の開発」を目指した省庁連携研究プロジェクトを開始したと発表した。

 プロジェクトでは、肺がんと特発性肺線維症症(IPF)に対する新規創薬ターゲット(医薬品が作用するタンパク質などの生体内分子)の発見を目的に、臨床情報と文献などの既存知識のデータベース(DB)を構築し、それらを利用して創薬ターゲットを推定するAIの研究開発を進める。見いだされた創薬ターゲットを企業に供与することで、創薬標的の枯渇により停滞しているといわれるする創薬研究を喚起する狙いがある。

Photo 「新薬創出を加速する人工知能の開発」の概要

 医薬基盤・健康・栄養研究所では、2017年度より、厚生労働省の事業として、AIを活用した創薬ターゲットの探索に向けたDBの構築を開始したが、今回、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)が管轄する「官民研究開発投資拡大プログラム」(PRISM)の枠組みに基づくプロジェクトとして、取り組みを拡大・加速させることになった。

 プロジェクトには、上記3機関の他、国立がん研究センター、産業技術総合研究所、東京大学、京都大学、大阪大学、九州工業大学など、計15の産学官の研究機関が連携・協力する。

Photo 「新薬創出を加速する人工知能の開発」の実施体制の概要

 PRISMは、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)と経済財政諮問会議が2016年12月にまとめた「科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアティブ」の下、科学技術イノベーションの創出に向けた官民の研究開発投資の拡大などを目指して開始されたプログラム。CSTIを司令塔として、民間研究開発投資の誘発効果の高い領域や、財政支出の効率化に役立つ領域(ターゲット領域)に各府省が管轄する施策の集約・連携を図る体制となっている。

 今回のプロジェクトは、ターゲット領域の1つである「サイバー空間基盤技術領域」の下に推進され、厚生労働省の「新薬創出を加速する症例データベースの構築・拡充」と文部科学省の「AIP:人工知能/ビッグデータ/IoT/サイバーセキュリティ統合プロジェクト」に該当する施策になる。

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