情報部門は一番の“業務コンサル”であれ――コーセー 情報統括部長 小椋敦子氏長谷川秀樹のIT酒場放浪記(5/5 ページ)

» 2018年08月24日 07時00分 公開
[やつづかえりITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

女性のロールモデルがいなければ自分がなる、と思えるマインド教育を

長谷川: 周りを見ていると、役員までいく女性ってノリも見た目も男性と同質化している人が多い気がします。小椋さんはちょっと不思議キャラですよね。女性的なところと男性的なところのバランスがすごくいいな、と。

小椋: いえいえ、私はこれまでも上司に散々かみ付いてきて、元ボスには「お前よく生き残ってるな」といわれるくらいなんですよ。ただ、そこは私が女性であることがプラスに働いてるなと思うんです。男性同士だとガチンコでやり過ぎて禍根を残すところを、たまたま性が違ったので見逃してもらっているという部分はあるかなと。

長谷川: なるほど。

小椋: 私は、考え方の部分では情緒的なところは薄いと思います。ただ部長になってから、感情的な部分では母親的な気持ちが溢れ出てきているんですよ。部下の年齢層は高めですが、みんなにうまくいってほしいな、という子どもを思うような気持ちです。もちろん優しいだけではいられないので、ものすごく厳しい要求もしますけど、一人一人を自立成長させるのが自分のミッションみたいな、そういう気持ちがすごく出てきていますね。

長谷川: 今、女性の情シス部長とかCIO職の人がほとんどいないのは、どうしてでしょうね。別に女性を多くすることが目的ではないにしろ、人口構成比からすると、もう少しいてもいいように思いますけど。

小椋: 能力的に十分な人はたくさんいると思うんですけど、精神的にタフな女性が少ないのかもしれません。

長谷川: それは情シス部長に限らない話でしょうね。でも、生物学的には、女性の方が強いですよね。

小椋: 生命力は女性の方が強いですね。

長谷川: じゃあ、今はミドル以下でいずれは管理職に行きたいという思いのある女性と、世の中の企業に対して何かメッセージはありますか。

小椋: どんどん上に行きたいと思っている若手の女性はすごく多いですけど、気になるのは彼女たちが「ロールモデルが欲しい」ということなんです。ロールモデルがいないなら自分がなる、という人たちがもっと出てきて、それが当たり前にならないとダメなんじゃないかな、と思うんですよ。

 そのためには、マインド教育みたいなものが必要かもしれません。女性って本当はすごく生命力も精神的にも強いはずなので、何かのきっかけがあれば絶対にそういう方向にいけるんだけれども、組織の中での精神的なタフさを持つという習慣が、長い歴史の中で培われてないように思うので。

 数年前から社内のダイバーシティープロジェクトみたいなものにも参画して、支店ですごく頑張っている営業の女性に会いに行ったりしているんです。そこでいろいろな話をするんですけど、例えば、私は育休がない時代に子どもを産んで、産後3カ月で復帰をしたけれど、そのときに全く仕事がなかったんですね。それは逆配慮で、私が仕事に押しつぶされて辞めないように、取りあえず続けていける環境を作りましょうという暖かい配慮でした。でも、自分にとってはそれが一番辛かったんですよ。そういう話をすると、すごく共感する女性もいます。数時間、話をするだけでも、「今まで営業現場からステップアップして管理職になるような女性はいなかったけれども、私はそうなります」と言ってくれたりして。そういう活動って、すごく重要だなと思いますね。

会社の外に緩やかなつながりができ、世界が広がった

小椋: 私、3年前に部門長になるまでは、会社の中の世界しか知らなかったんです。いろんなフォーラムなんかに行ったりはしても、ここで発言していいんだろうか、みたいな遠慮もあったりして、すごく中途半端な関わり方でした。それがこの3年は、E-JAWSを始め社外でのつながりができて、世界がものすごく広がりました。この連載でも入山先生(早稲田大学大学院の入山章栄准教授)との対談がありましたけど、以前に先生が講演で「緩やかなつながりが、イノベーションや、世界を広げることにつながる」とお話されているのを聞いて、本当にそうだと思いました。ここ数年で私の世界は爆発的に広がって、それは自分の中ではものすごいイノベーションなんです。

長谷川: いいですね。

小椋: こういうチャンスが、部門長ぐらいにならないとないのはもったいないなと思う一方で、こういう立場になったから、つながりを生かせるのかな、とも感じるんですよね。

Photo

長谷川: そういう面はありますね。1つは、上長になるということはいろんな物事が分かっているからというところがあって、仮に産業が違っても話が合うしお互い勉強になって楽しいんでしょうね。もう1つは、やっぱり決裁権限を持っている人の方が、お互いに話している意味があるというか、社外の人と話して得たインプットを、すぐに実行できますからね。

小椋: 長谷川さんのそういうところ、すごいですよね。どれだけ広げるんだ、と思うぐらいに。長谷川さんのような、それまでは全然違う世界にいた面白い人たちと知り合えて、今すごくワクワクしているんですよ。仕事だけじゃなくて今後の自分の生き方にも、ものすごく影響を受けていると思います。

長谷川: いやいや。でも僕も、前職より東急ハンズに来てからの方が、他社さんとの付き合いは楽しいです。今後ともどうぞよろしくお願いします。今日は、ありがとうございました。

小椋: こちらこそ、ありがとうございました。とても楽しかったです。

Photo

ハンズラボ CEO 長谷川秀樹氏プロフィール

1994年、アクセンチュア株式会社に入社後、国内外の小売業の業務改革、コスト削減、マーケティング支援などに従事。2008年、株式会社東急ハンズに入社後、情報システム部門、物流部門、通販事業の責任者として改革を実施。デジタルマーケティング領域では、Twitter、Facebook、コレカモネットなどソーシャルメディアを推進。その後、オムニチャネル推進の責任者となり、東急ハンズアプリでは、次世代のお買い物体験への変革を推進している。2011年、同社、執行役員に昇進。2013年、ハンズラボを立ち上げ、代表取締役社長に就任。(東急ハンズの執行役員と兼任AWSの企業向けユーザー会(E-JAWS)のコミッティーメンバーでもある。


取材・執筆:やつづかえり

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ