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» 2018年09月14日 07時00分 公開

【特集】Transborder 〜デジタル変革の旗手たち〜:なぜ、京王電鉄は「AIベンチャー」を立ち上げる必要性があったのか? (3/4)

[高木理紗,ITmedia]

京王電鉄に復帰、スピード感を重視して「内製化」へ

 その後、2017年に再び京王電鉄に戻った虻川さんだったが、世の中の動きに対してシステムを取り巻く状況があまり変わっていないことに焦りを覚えたという。京王バスでの経験を生かし、すぐに京王電鉄でもkintoneを導入。自部門の業務から始め、グループを横断的に利用するセキュリティポータルなど、スピード感を重視する形で100以上の業務アプリを内製で作り、AWSも導入した。社内のシステム構築やサービスリリースの速度を上げるよう、内製化に移行する“変革”を進めている。

 「京王電鉄では、システム構築を外注するのが当たり前になっていたため、内製化に対して反発がありました。しかし、見積もりや提案など、外注先とのやりとりに手間をかけていては、ユーザーの求める変化の速度に追い付けません。

 まずは社内やシステム子会社のメンバー向けにkintoneやAWSの勉強会を開きました。議論をしているだけでは不安はなくなりません。実際に触って体験してもらうことが、一番効果があると思います。今まで『クラウドなんて』と言っていた人にも『こんなに簡単に仕組みを作れるなら使わない手はない』と、納得してもらえました」(虻川さん)

 こうした変革により、新技術に対するキャッチアップのスピードも上がった。2017年11月に日本でスマートスピーカー「Amazon Alexa」のサービスが開始された際も、いち早くバスの予約サービスを開始するなど、業界としては珍しい取り組みも見られる。感性AIを立ち上げたのも、AIやIoTを使ったデータの価値化に目を向けた結果だという。

鉄道会社が「AIベンチャー」を立ち上げる必要性とは?

 そもそも、鉄道事業を主体とする京王電鉄は、なぜAIやIoTに興味を持ったのか。それは、鉄道やデパート、ホテルといった、いわば“レガシー”なビジネスを運営しているからこそ生まれた問題意識からだった。

 「実際、いわゆる“デジタルディスラプター(創造的破壊者)”であるAmazonやAirBnB、Uberといった企業からすれば、京王グループのような既存事業者は破壊される側になると思います。事業の幅が広いからこそ攻められるポイントも多い。

 そのため、自らビジネスモデルを見直し、新興企業とどう戦い、あるいはどう手を組むのかを考える必要があると思っています。彼らに単なる動きの悪い“レガシーな会社”としてではなく、積極的に新しい分野に参入する、どちらかといえば『手を組むべき企業』としても認めてもらうのが重要なんだと思います」(虻川さん)

 そんな折、社内のある会合で、「AI活用」というテーマで坂本教授が講演を行ったことをきっかけに、AIを使った事業のアイデアを求めていた京王グループと、起業を目指していた坂本教授のニーズが一致。ベンチャー企業として感性AIが立ち上がった。

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