航空旅客数が今後20年で倍増するという予測もある中、世界的に航空機の供給が追い付いていない。この状況に対し、三菱重工航空エンジンはIoTやデータ分析で生産性を高めようとしており、Tableauの導入に踏み切った。年を追うごとに利用者数が増えており、着実な成果が出ているという。
外国人観光客の増加により、日本では「空港のキャパシティーが足りない」といわれているが、世界的に飛行機の利用者数は増え続けている。IATA(国際航空運送協会)は今後20年で航空旅客数が倍増すると予測しているが、こうなると足りなくなるのが航空機だ。最近では、需要に対して生産が全く追い付いていない状況だという。
日本の航空機エンジンメーカーである三菱重工航空エンジンも、この活況をチャンスとみているが、需要の増加に合わせて、すぐに生産設備を拡大できるわけではない。同社 IT戦略グループの吉野一広氏は、この状況をITを駆使して切り抜けようと考えている。
「航空機の数が2倍になるとすれば、われわれも2倍の生産能力を持たないといけませんが、生産設備を2倍にするのは難しい。IoTやAIを活用し、サプライチェーンマネジメントの高度化とスマートファクトリー化を進め、生産性を高めることで対応しようとしています」(吉野氏)
情報の活用を進めるため、同社はまず情報を蓄積する体制を整えた。設計や製造、営業記録といった基幹系データベースから、各社員が持っているデータなど、社内に点在する情報を一元化するDWH「e-Work DB」を2015年に構築。IT部門がExcelマクロなどでデータを加工し、ユーザーに提供するようにしたという。
しかし、データ分析を行うユーザーが増えるとともにデータの加工に対する要求も増加。IT部門の手が回らなくなってきたことから、ユーザーが自らデータの加工や解析が行えるツールを求め、セルフサービスBIの導入を検討。4社ほどの製品を比較した結果、Tableauを導入することに決めた。
こうして2016年、試験導入という形で少数のライセンスを購入し、グラフ作成などでニーズが多かった生産技術部門と品質保証部門の20人程度に対して説明会を実施。限られたライセンスを有効に使い、2週間ごとに変化する要件の整理や生産ライン能力の一覧、加工品質やリードタイムの分析、サプライヤーの評価など、さまざまなグラフを構築していった。
導入の結果、分析に必要なデータ加工時間が短縮したほか、さまざまなデータを可視化し、データの更新頻度が高まったことで、問題の早期発見や対処も実現できたという。
「Excelだとデータの更新が大変で、その作業に時間が取られていたケースも多かったのですが、Tableauであればデータの自動更新も楽に行え、テンプレートの横展開も簡単。資料を作る時間が減り、資料を基に考える時間が増えました」(吉野氏)
成功事例が増えるとともに、導入する部門も徐々に広がり、現在では、購買や経営なども含めた約7割の部門が採用しており、全社的な説明会も実施しているそうだ。当初は14程度だったライセンスも、今では約200人に向け、利用形態に応じて割り当てているという。
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