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» 2019年03月07日 07時00分 公開

「攻めのIT、守りのIT」はオワコン? オイシックスのCMT、西井氏に聞く「ビジネスとITの間を行き来できる組織の作り方」CIOへの道(2/5 ページ)

[吉村哲樹, 後藤祥子,ITmedia]

業務現場に“マーケティング感覚”を浸透させるには

中野: ちなみに「西井さんの考えるマーケティング」を一言で言い表すとしたら、どんな表現になるでしょうか。

西井: 前職では化粧品の大手EC販売企業でやはりマーケティングを担当していたのですが、そのとき経営のトップから教えられた「“売れる仕組みをどう作るか”がマーケティングである」という言葉がしっくりきますね。確かにその通りだと実感もしましたし……。オイシックス・ラ・大地では、これを「売りたい気持ちをどうやって買いたい気持ちに変えていくか」という言葉に言い換えて、社内の人たちに伝えています。

中野: とても分かりやすいメッセージですね。

西井: 例えばAmazonは、2010年ぐらいまではテレビCMなどを一切、打っていませんでしたが、「買いたい気持ちを醸成する」というマーケティング戦略は、それ以前から常に一貫していましたよね。欲しいと思うものがすぐ届く、検索ですぐ商品ページにたどり着ける、価格も安い――。他社が商品ページの内容を厚くしたりする中で、アマゾンは「買いたいと思ってからすぐに商品にたどり着き、そして届く」という、とにかく「買う」という行動に至るまでのプロセスを徹底的に短縮することが、彼らのマーケティングの優れた点だったわけです。決して広告うんぬんの話ではないんですね。

 オイシックスも同じように、広告だけがマーケティングだとは考えていません。もちろん、広告がマーケティングにとって有効であれば広告を打ちますが、もしロジスティクスに課題があるならロジスティクスに取り組みます。そうやって売れる仕組みを作ること、お客さまの買いたい気持ちを醸成すること自体がマーケティングであると考えています。

中野: そうしたマーケティング施策を推し進めるためには、確かに現場が「常日頃からマーケティングの視点を持つこと」が重要になってきますね。

西井: 外から見ると、CMOが一人でオイシックスのマーケティング戦略を策定しているように見えるかもしれませんが、全くそんなことはないんです。経営メンバーも関わっていて、社長はもちろん、各事業の担当も交えて議論しながら全体戦略を作っています。

 そうやって決まった戦略を現場に落とす際に、場合によっては、「現場が“自分たちに都合がいいように”解釈して、現場が作りたいサービスになってしまう」ことも多々あります。そんなときに、現場の都合ではなく、常にお客さまの方を向いたサービスになるよう、うまくガイドしていくのも、私の役割の1つです。

 私自身が、どちらかというと現場になじみやすいキャラクターなこともあり、いろいろな現場に入り込んで声を拾い集めた上で、全社的なマーケティング戦略にまとめあげていくのが主な仕事になっています。だから私は、情報システム部の味方であり、マーケティング部の味方でもあり、ECのセールス部隊の味方でもある。「全員の味方」である中で、どうやって全体の仕組みを作り上げればいいかを常に考えています。

 そのため、実際にやっているのは、朝から晩までいろんな部署とひたすらミーティングすることなんです。8時間の間、30分単位でミーティングがびっしり入っていて、そこでは具体的なマーケティング施策のアドバイスをすることもあれば、システム企画の相談に乗ることもあれば、部門間のいざこざの仲裁に入ることもあります。

 組織ってどうしても、「自分たちの見方」でものごとを見てしまいがちですが、そこに私のような人間が入って「会社のビジョンって、楽しい食卓を作ることだよね」と言って“原点に立ち返るきっかけを与えること”が、とても重要なのです。そんな仕事の仕方をしているので、私はどの部署からも「自分の部署の人」だと思われてるはずです(笑)。

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