ゴールを明確にせよ――AWSが説く「クラウドジャーニーの勘所」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2019年06月17日 12時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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4つのステップからなるクラウドジャーニー

 では、本題のクラウドジャーニーの話に。長崎氏は図2を示しながら、次のように説明した。

Photo 図2 2つのクラウドジャーニー

 クラウドジャーニーの取り組みは、まず2つのタイプに大別される。1つは、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)を強化する「サービス系システム」、もう1つは、安定性を最重視する既存の「基幹系システム」だ。前者は、顧客との双方向のコミュニケーションが必要となり、その顧客体験を進化させていかなければならない。これに対して後者は、進化より一定の状態を保ち続けることが最重視される。

 業界用語で言えば、サービス系システムは「SoE(Systems of Engagement)」あるいは「モード2」、基幹系システムは「SoR(Systems of Record)」あるいは「モード1」である。

 そう分類した上で、長崎氏は次のように説いた。

 「基幹系システムをクラウドへ移行する際は、まずリフト&シフト形式でそのまま移すケースが多い。その後、クラウドの理解を深めながら、クラウドネイティブへシフトしていこうというアプローチだ。こうすることによって、基幹系システムが洗練されて、やがてはサービス系システムと連携から融合に向かうシナリオが描けるようになる」

 その意味では、「リフト&シフト」は基幹系システムにおけるクラウドジャーニーの“旅立ち”といえる。

 こうした2つのタイプを踏まえ、クラウドジャーニーのステップを示したのが、図3である。

Photo 図3 4つのステップからなるクラウドジャーニー

 第1ステップは「計画」。費用面や運用効率、セキュリティ、パフォーマンスなどの観点からクラウドの検証を行うことである。長崎氏によると、ここで重要なのは「ゴールを明確にする」ことだ。

 「コストダウンなのか、業務効率の改善なのか、イノベーションなのか。ゴールが明確になれば、クラウドはPoC(実証実験)を素早く行えるので、この計画ステップを短期間で終えることができる」

 第2ステップは「ハイブリッド」。一部のシステムをクラウドへ移行しながら、社内でクラウド人材を育成。また、運用の自動化を検討しながら実装することである。長崎氏によると、ここで重要なのは「クラウド人材の育成」だ。例えば、今後のクラウドネイティブなアプリケーション開発に向け、この段階で社内でのクラウド人材の育成に注力するという考え方である。これは、ハイブリッドをクラウド移行の通過点とするAWSらしい発想である。

 第3ステップは「拡張と最適化」。移行済みシステムのアーキテクチャを必要に応じてクラウドに最適化する。また、よりミッションクリティカルなシステムにしていくことだ。長崎氏によると、ここで重要なのは「堅牢性の高いシステムに変えていく」ことである。

 そして第4ステップは「クラウドファースト」。クラウドのシステム総保有コストは立証され、クラウドファーストの原則が会社に適応されることである。

 長崎氏は図3の説明の最後に、「AWSはこうしたお客さまのクラウドジャーニーを、全てのステップにおいてしっかりと支援していきたい」と力を込めた。ちなみに、第3ステップまでの内容で「ここで重要なのは」と説明している箇所は、クラウドジャーニーの勘所である。

 AWSジャパンはこのイベントで毎回、企業におけるクラウド化のステップについて説明しているが、今回は一段とシンプルで分かりやすくなったように感じた。企業のITシステムのクラウドへの移行率はまだ2割程度ともいわれる中、クラウドジャーニーの説明は引き続き重要だと認識しており、今後も折りに触れて書き記していきたい。

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