SAP MaxAttentionとSAP ActiveAttentionは、顧客がどのような形でSAPソリューションを導入しようとしているかを把握。技術的な観点からリスクの有無を確認し、テスト段階で目標とするパフォーマンスが達成できているかをレビューした上で、達成できていない場合の最適化方法などを提案する。各フェーズに合わせた合計10のパッケージサービス群を用意して、これらを顧客の状況に応じて取捨選択して提供するとしている(図2)。
こうした新サービスの発表会見での工藤氏の冒頭の発言は、何を意図しているのか。キーワードは「三位一体」、つまりはSAPと顧客、パートナー企業が一体になって顧客のDXの取り組みを推進していくことが重要だと説いているというのが、筆者の解釈である。
この三位一体の取り組みを、筆者は「ビジネスエコシステム」と呼んでいる。すなわち、SAPはDX支援事業に向けてビジネスエコシステムを拡充していくことを強調したのである。
このビジネスエコシステムについては、前回の本連載記事「業種別ソリューション展開に注力する日本マイクロソフトのしたたかな思惑」でも言及した。前回の日本マイクロソフトも、今回のSAPジャパンも、新しい動きとして捉えられるのは、顧客のDXに向けた新しいIT環境の導入を支援する独自の知見やノウハウをサービスの形で提供していることだ。
これは、製品をパートナー経由で顧客に提供していた以前の“一方通行”のビジネススタイルとは違い、DX時代に不可欠な“共創”の土壌であり、新たな顧客獲得競争に向けた“陣取り合戦”が繰り広げられる場にもなりそうだ。
こうしたビジネスエコシステムの構築、拡充の動きは、もともとエンタープライズベンダーとして企業向けビジネスを展開してきたIBMやOracleも今後注力してくるのは間違いない。
また、DXではクラウドが重要な要素になることから、メガクラウドベンダーのAmazon Web Services(AWS)やGoogleもビジネスエコシステムづくりには躍起になってくるだろう。今後は、メガクラウドベンダーとエンタープライズベンダーの連携話も頻繁に出てくると思われる。それが顧客ニーズだからだ。
先般、Oracleが発表したメガクラウドベンダーでもあるMicrosoftとの連携強化は、まさしくこうした動きを象徴するものである。
そうした中で、富士通やNEC、日立製作所、NTTデータといった日本の大手ITベンダーは、上記のグローバルベンダーの有力パートナーであるとともに、独自のサービスも展開する“共創と競合”の立場にある。ただ、顧客と密接な関係にある日本のITベンダーならではのビジネスエコシステムの構築の仕方もあるような気がする。知恵を絞りたいところだ。
顧客の立場であるユーザーとしては、こうしたビジネスエコシステムの動きも注視して、自社のDXの取り組みにフィットするビジネスパートナーを選びたいところである。
業種別ソリューション展開に注力する日本マイクロソフトのしたたかな思惑
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