HCIは今、なぜ高い成長率を示しているのか。そして、今後も2桁成長が予測される理由は何か。
IDC Japanは、高成長率について「仮想化の進展に伴って顕在化した、仮想マシンやストレージの管理の複雑化に伴う管理工数の増加、パフォーマンスやストレージ容量の不足といった課題を解決するソリューションとして急速に普及している」と分析している。
また、今後については「ITインフラの運用管理の効率化、ビジネスニーズに対応する俊敏性や柔軟性の向上、導入の迅速性や容易さ、柔軟な拡張性の実現」などを成長の理由として挙げている。
上原氏も会見で、企業がHCIを採用する原動力として「効率の向上」と「運用コストの削減」の2つを挙げ、具体的な要素となる「俊敏性」「拡張性」「シンプル」についてそれぞれ図4のように説明した。
ここで注目しておきたいのは、IDC Japanも上原氏もHCIのこれまでの成長要因として「従来のITインフラの刷新」を挙げているものの、「ハイブリッドITのインフラ」には言及していないことだ。
すなわち、上原氏の言葉を引くと、これまでは「ITインフラの効率を向上させて運用コストを削減する」ために、HCIが選ばれてきた。同時に、ハイブリッドITのインフラとしての機能も装備していることから、その用途を見据えて採用する企業も少なくないと推察される。
では、HCIの今後の動向についてはどうか。上原氏は今後のトレンドとして「ハイブリッドクラウドへのHCI活用の加速」をはじめ、「データセンターの近代化」「エッジコンピューティングの成長」「クラウドネイティブ採用の原動力」の4つを挙げた。
図5が、その4つそれぞれのポイントを記したものである。ちなみに、下段にある「継続的なイノベーション」に挙がっているのは、上原氏が「HCIと非常に親和性の高い技術やサービス」と指摘したものだ。
注目すべきは今回挙がった4つのトレンドだ。ハイブリッドクラウドへの加速については以前から期待を集めてきた。その進展に伴って、クラウドネイティブ採用の原動力となっていくことも大いにあり得るだろう。データセンター近代化に伴うHCI採用の動きも想像がつく。
筆者がこの4つの中で最も注目するのは、エッジコンピューティングの成長である。エッジコンピューティングとは、データをクラウドで集中処理せず、データの発生する現場に近いところである機器や施設で処理する技術だ。HCIがそのエッジの役割を担う可能性は大いにある。しかもこの市場は、今後大きく広がるとみられている。
上原氏が挙げた4つのトレンドを見ると、企業にとってHCIをうまく活用することが、ITインフラの刷新、さらにはデジタル変革(DX)を推進する重要なポイントになりそうだ。
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