気象予測データをDXに生かせ KPMGと日本気象協会が展開する協業サービスとはWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2020年08月11日 11時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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3つのメニューからなる協業サービスを業界横断で展開

 KPMGと日本気象協会が提供する協業サービスの具体的な内容は、大きく分けて次の3つのメニューからなる。

 1つ目は、「需給予測とオペレーションの最適化支援」である。

 日本気象協会が多数の実績を持つ高精度な気象予測を踏まえた商品需要予測に、KPMGの経験豊富なコンサルティング力を生かす。主に製造業や製造小売業、小売業、外食業における仕入れや販売、マーケティング計画の最適化、生産計画やサプライチェーンの最適化、ダイナミックプライシングの実施など、オペレーションの最適化を支援する。

 2つ目は、「金融商品とサービスの開発支援」である。

 高精度かつ網羅性、継続性、一貫性のある気象、気候予測データと、金融データなどの連携を図る。ESG(Environment, society, governance:環境、社会、ガバナンス)投資なども考慮し、新たな気候変動の緩和や適応に向けた金融商品の開発の他、投資、運用業務の最適化を支援する。

 また、気象に関連した災害や事故を想定した顧客向けの情報提供サービスや保険商品の拡充、保険損害サービスなどのリソース配置最適化など、金融、保険業への気象予測と気候変動分析のビジネス活用の支援を行う。

 3つ目は、「早期アラート情報に基づく有事対応とBCPの高度化支援」である。

 早期かつ高精度な気象災害予測を基に、企業における有事の対応を含めたBCPの実効性強化を支援する。気象庁による公開情報に先んじて特定事業者向けに洪水などの気象災害の予測を図ることで、早期に災害発生を検知した場合の行動計画を整備し、有事の際に早い段階で被害軽減や回避行動を取ることが可能となる。

 こうした協業サービスについて、宮原氏は図2を示しながら、次のように展開への決意を示した。

Photo 図2 協業サービスは業種横断で幅広く展開(出典:KPMGコンサルティングと日本気象協会の資料)

 「気候変動に対する緩和策や適応策が必要な業界は多岐にわたる。協業サービスはあらゆる業界横断で拡充を図り、グローバルへの展開も予定している。さらに、気候変動に関する情報を両社によるさまざまな活動を通して積極的に発信し、企業のみならず個人や社会全体に対して環境意識向上に向けた啓発を行い、将来の温暖化の緩和に寄与することを目指したい」

 最後に、この会見で見た興味深い図を取り上げておこう。日本気象協会 商品需要予測プロジェクトマネージャーの本間基寛氏が、協業サービスメニューの1つ目の説明で挙げた「小売業における需要予測のあるべき姿」(図3)だ。この図は、小売業の需要予測に必要なデータとその活用法の全てをエキスパートがピックアップしたものである。協業サービスもこのあるべき姿を目指すということだ。

Photo 図3 小売業における需要予測のあるべき姿(出典:KPMGコンサルティングと日本気象協会の資料)

 この小売業のケースを見ても、気象予測データがそれぞれの分野のデジタルトランスフォーメーションを加速させる重要な要素であることがうかがえるだろう。本間氏によると、「全産業を対象とした企業のうち、気象予測データを活用しているところはまだ5%程度と認識している」とのこと。多くの企業にとって、気象予測データの活用は新たなビジネスチャンスになるのではないか。

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