企業のITにクラウドサービスが使われるようになってきた中で、特に中小企業においてはSaaSで全てカバーできるのではないか。筆者はかねてそう思ってきたが、セールスフォースの新施策を聞いて、その意を一層強くした。どういうことか、解説しよう。
セールスフォース・ドットコム(以下、セールスフォース)が2020年9月10日、国内の中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するクラウドサービス「中小企業デジタル変革支援パッケージ」を90日間、無償で提供することを発表した。
その内容については関連記事を参照いただくとして、同社はこの発表のオンライン会見で、パートナーとの協業においても新たな施策を打ち出した。「企業のこれからのIT基盤」と銘打った「SaaSMix」である。今回はこの新施策に注目したい。
本題に入る前に、セールスフォースの中小企業への事業姿勢や主要サービスであるCRM(顧客情報管理)の内容について紹介しよう。
会見で説明に立った同社の千葉弘崇氏(専務執行役員コマーシャル営業担当)は、中小企業庁が公表している統計調査の結果を引用し、国内の全事業者のうち中小企業が99.7%を占めることから「全国の中小企業が日本の経済を支えている」と語った。同氏は、中小企業の支援について「セールスフォースが創業時から持ち続けているDNAだ」と強調した。(図1)
同社は、図2に示すように「Salesforce Customer 360」というCRMを提供する。同サービスについては「企業のビジネスを変革し、お客さまが期待されるパーソナライズされた顧客体験の提供を支援する」と説明する。図2の左側には、関係する部署やビジネスシーンを連携させるCRMのアプリケーション、右側にはそのエクスペリエンスを実現させるテクノロジーのプラットフォームが描かれている。
同社でパートナーとの協業を推進する御代茂樹氏(執行役員アライアンス事業AppExchangeアライアンス部 部長)は、SaaSMixについて、図3で企業における従来のIT基盤の課題を示しながら、次のように指摘した。
「これまでのIT基盤はSIer(システムインテグレーター)に委託してスクラッチで開発してきたケースが多い。それではシステム連携の自由度がなく、時間とコストもかかっていた。また、SaaS(Software as a Service)を導入しても部分最適にとどまるケースが少なからず見受けられた」(御代氏)
CRMをSaaSで提供しているセールスフォースとして、御代氏が特に問題視したのが、SaaSが企業のIT基盤の部分最適にとどまっていることである。
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