デジタル社会では多くのケースで本人確認が求められるようになる。その技術として顔認証が注目されている。この分野をリードするNECの話をもとに、その最前線と可能性について考察したい。
NECが2020年9月24日、マスク着用時でも高精度な認証を実現する新たな顔認証エンジンを開発したと発表した。同エンジンを用いた映像分析基盤ソフトウェアや、複数の生体情報を活用して、マルチモーダル生体認証を実現するサービスなどを10月上旬から順次、販売開始する。
そこで今回は、NECの今岡仁氏(フェロー)によるオンライン形式の発表会見での説明を基に、顔認証技術の最前線と可能性について考察してみたい。
まずは、顔認証技術がなぜ注目されているのかについて、今岡氏が分かりやすく説明していたので図を交えて記しておこう。
図1は、認証方法の種類を挙げたものだ。知識認証や所有物認証と比べて、顔認証や指紋認証などの生体認証には「唯一性により、なりすましが困難」という特長がある。
その生体認証の中でも、顔認証は図2に示すように、特に精度と利便性が両立した認証方式だという。それが具体的に利用者にとってどんなメリットをもたらすのか。
今岡氏は「身近で自然な認証方式なので利用者の心理的負担が少ない」「タッチレスによって高い利便性とともに衛生面でも優れている」「スマートフォンのカメラなどで利用者自身が認証データを登録可能」「一般的なWebカメラも利用でき、登録データとして既存の顔写真も利用できるため、専用装置が不要」といった点を挙げた。
NECはこれまで30年以上にわたって顔認証技術の研究開発を続けている。図3に示すように、同社は米国の国立標準技術研究所(NIST)から高い評価を受けている。
ちなみに、同社は「Bio-IDiom」ブランドの下、虹彩、顔、指紋および掌紋、指静脈、声、耳音響の6つの生体認証技術を有しており、世界約70の国と地域に1000システム以上の導入実績を持つ。
図4に示したのが、同社の生体認証技術ビジネスのグローバルでの導入実績である。横軸は用途で、認証やセキュリティ、決済だけでなく、マーケティングや接客といった“おもてなし”にも広がっているのが興味深い。縦軸は組織単位で、こちらも個人から国レベルまで幅広いユースケースが見て取れる。
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