IDaaSの注目ベンダー、Oktaが満を持して日本法人を開設 その戦略と展望を探る【後編】「使いやすいID管理」を、日本企業にどこまで提供できる?

「日本ではこれからクラウド利用が拡大する」――。OktaのマッキノンCEOは10年以上前、日本郵政のプロジェクトに関わった経験からそう確信していたという。SaaSの利用が拡大する中、海外とは異なるIDaaSへのニーズにどこまで応えようと考えているのか。

» 2020年09月30日 07時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]

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 Software as a Service(SaaS)利用の増加を背景に、IDaaS(Identity as a Service:ID管理サービス)のニーズが高まりつつある。IDaaSは欧米企業を中心に先行して利用されてきた。そこで注目を集めたベンダーの一つが「Okta Identity Cloud」(以下、Okta)を提供するOktaだ。

 同社は2020年9月、ついに日本法人であるOkta Japanのスタートを発表した。Oktaは8400を超える企業や組織で利用され、Gartnerによるアクセス管理に関する「マジック・クアドラント」でも、2019年まで3年間連続でリーダーに選出されている。日本では、グローバルでビジネスを展開する外資系企業を中心に利用されているが、これまで日本法人がなかったため、使いたくてもサポート体制に不安を持った日本企業が採用を見送ったケースもあったようだ。

 OktaのCEOであり共同創設者のトッド・マッキノン(Todd McKinnon)氏は「2009年の創業当初から、日本は重要な市場だと考えていた」と話す。しかし実際の日本法人立ち上げに至るまでには、10年あまりもの時間がかかった。日本法人開設がこのタイミングになったのはなぜか、日本市場にはどのような期待があり、今後は具体的にどのような戦略でビジネスを展開するのか。また、Oktaが今抱える課題とは何か。

 Okta Japanの展開するサービスについて聞いた前編に引き続き、後編ではインタビュー形式で、マッキノン氏とOkta Japan代表の渡邉 崇氏に話を聞いた。

10年かけて日本進出 OktaのCEOが捉えた「勝機」と「挑戦」とは

谷川(以下、Q) Oktaは創設当初から日本市場への進出のアイデアがあったとのことですが、実際に日本に拠点開設までに10年の時間がかかっています。これだけの時間が必要だった理由は。

トッド・マッキノン氏(以下、マッキノン氏) 2009年に創業して、10年間でさまざまなことがありました。Oktaは初期の段階から、独立した企業として運営すると決めていました。その体制を維持するためにも、日本のビジネスは外せないと考えていました。私自身は、日本でのビジネスを楽しみにしていました。と言うのも、私は以前Salesforce.comでエンジニアリングチームのリーダーとして働いていた際、世界的にも大規模なユーザーである日本郵政グループの成功事例に携わりました。この経験から、日本ではクラウドの利用が、今後大きく拡大すると確信していたのです。

Oktaのトッド・マッキノンCEO

 外資系ITベンダーの多くが、北米でビジネスを始めて成長し、早い段階で同じ英語圏の英国やオーストラリアなどにビジネスを展開します。日本にも早く進出したいと考えていましたが、日本には成熟した市場があることから、それなりの規模のチームが必要だと考えました。営業とサポートの窓口だけではなく、マーケティングやカスタマーサクセスチームなどもそろった、完全な会社組織を作ろうと考えたのです。

 体制を整え、ビジネスチャンスを待った結果、日本での拠点の立ち上げが2020年になりました。時間はかかりましたが、良いチームを立ち上げられましたし、待ったかいはあったと思います。日本法人を立ち上げる前から、日本には顧客がありました。Oktaの製品も、それなりに市場で認められていると思っています。日本のチームは、既存の顧客も新規の顧客にも十分なサポートができるでしょう。

Q SaaSやPaaSのベンダーに縛られることなく、独立性を維持していることがOktaの強みだと理解しています。一方で、現状のOktaにとっての課題は何ですか。

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