資金力の“格差”がきっかけ J2のモンテディオ山形が選手強化に企業ツール導入、監督選びまで変えた戦略とはJリーグ平均「4分の1」の人件費で始まった挑戦

「予算が少ないから人が来ない」。多くの一般企業が抱えていそうな課題に、デジタル戦略という“知恵”で挑むサッカーチームがある。東北に本拠地を置くモンテディオ山形だ。選手強化に一般企業向けの人材ツールを導入するだけでなく、そこで得たアプローチを監督選びや下部組織を含めた強化まで、柔軟に生かそうとする同チームの戦略とは。

» 2021年07月09日 07時00分 公開

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 自社に合った人材の確保に悩む日本企業は多いはずだ。中途採用した人材がうまくフィットしないケースや、研修を通して育てたはずの新人が「やっぱり合わない」と転職してしまうケースも珍しくない。限られた予算で現場に合う人材を見つけ、従業員のスキルを伸ばして組織の力を底上げするにはどうすればいいのか。

 プロのスポーツチームも同じ悩みを抱えている。Jリーグ2部(J2)に所属するモンテディオ山形もその一つだ。決して潤沢ではない強化費の中でチームが求める人材を見つけ出し、育ててチームを強化しようと、同チームが着目したのがデジタルツールとデータの活用だった。強化部長を務める高山明泰氏は、2020年に編集部のインタビューに応じ、一般企業向けのツールをチーム強化に取り入れた過程について語っていた。

「ITmediaDX Summit vol.8」に登壇したモンテディオ山形の高山明泰氏(強化部長)

 インタビューから半年、デジタルを使った挑戦は、選手強化のプロセスを変えただけでなく、新たに就任した監督の選考プロセスをはじめ、当初の目的を超えてチームに広がりつつあるという。そこにどのような戦略があったのか。2021年6月、高山氏がアイティメディアのオンラインイベント「ITmediaDX Summit vol.8」に登壇し、「DX時代のチーム作りへ モンテディオ山形の挑戦」と題して詳しく語った内容をお届けする。

立ちはだかる“予算の格差”を、柔軟なデータ活用で越えられるか

 山形県総合運動公園をホームスタジアムとするモンテディオ山形は、現在J1リーグ昇格を目指し、J2リーグを戦っている。

 モンテディオ山形自体は、公園の指定管理事業とサッカーチームの運営を担う株式会社でもある。今回取り上げるチーム運営事業は、スポンサーなど支援企業から資金を集める営業部、経営全体を考える経営企画室などに支えられている。

 強化部は、選手や監督、コーチといったスタッフを含めたチームの編成作業を担う。その目的は「とにかくチームを強くすること」だ。「チームが強くなることで、多くのファンやサポーターに試合に来ていただき、スポンサーの皆さまにとっても魅力ある存在になっていきます」と高山氏は話す。

 「これ」と決めた人材と獲得交渉を進め、選手やスタッフの試合におけるパフォーマンスを評価し、年俸を決定する作業も重要な仕事だ。サッカー面はもちろん、社会人としても選手たちを育成し、試合に向けてコンディションを整えるよう指導もしている。

強化部の業務は、選手の獲得や育成、管理だけでなく、査定や予算管理など多岐にわたる(出典:モンテディオ山形の講演資料)

 多様な業務をこなす高山氏らの前には、さまざまな壁が立ちはだかる。その一つが予算だ。世界的な選手を擁する欧州リーグのトップチームならばともかく、Jリーグの中でも上から2つ目のカテゴリーであるJ2に所属するモンテディオ山形は、平均以下の人件費での戦いを強いられているのが現実だ。

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