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» 2021年08月19日 16時00分 公開

フォスター電機、国内初の「SAP on Google Cloud」採用は「検討4カ月、移行2日」(1/2 ページ)

フォスター電機は「SAP on Google Cloud」を基盤に基幹システムとして利用する「SAP ERP」をクラウドに移行した。運用の課題や今後のデータ活用基盤整備に向けた構想と、コロナ禍でのフルリモートクラウド移行の全容を聞いた。

[ITmedia]

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 1949年創業のフォスター電機はスピーカーやヘッドフォンなどのモバイルオーディオ、音響部品の製造、販売を手掛ける音響機器/電子機器メーカーだ。日、米、欧の主要自動車メーカー向けの車載用音響機器のOEM/ODMを中核事業としており、グループで国内8拠点、アジア圏に20拠点、北米に7拠点、欧州2拠点、南米1拠点を構える。中国の製造委託先を含むグループ従業員数は1万8611人(2021年3月31日現在)だ。

 同社は2030年までの長期経営計画のビジョンに「世界一の『音響』ソリューションパートナー」を掲げ、現在「OEM/ODMサプライヤーから戦略パートナーへ」の転換を目指す中期経営計画「Foster2024」に基づき、総合的かつ戦略性の高い製品の提供を目指した活動を進める。

 同社はSAP ERPシステムのクラウドリフトを実現、その後、クラウド「シフト」も推進し、国内で初めて「SAP on Google Cloud」の導入に成功している。国内外に複数の製造拠点や販売拠点を抱える同社はどのようにクラウドシフトを実現したのだろうか。

※本稿はグーグルクラウド主催のオンラインイベント「Google Cloud Day: Digital ’21」の講演内容を基にITmedia エンタープライズ向けに再構成しています。


SAP on Google Cloudを国内で初採用

Photo フォスター電機 グローバルコーポレートサポート本部 経営戦略情報室 次長の中村俊一氏。中村氏はIT企業のエンジニアを経て、2007年にフォスター電機に入社。基幹システムの刷新や内外のプロジェクトに参加している。今回のSAPのクラウド移行ではプロジェクトマネジャーを務めた

 同社のSAP ERP利用は2008年、本社のサーバ室でのオンプレミス運用からスタートした。2013年から2015年にかけて、国内ベンダーのクラウドでの運用を経て、2017年に「Google Cloud」に全面移行する方針を決定し、開発を開始した。2018年にミャンマー拠点、2019年にベトナム拠点の製造実行システム(MES)をGoogle Cloudで稼働させたことを皮切りに、2020年5月にはMESだけでなくSAP ERPのGoogle Cloud移行も完了した(図1)。

 SAP ERPのクラウド移行に当たっては、ERPを最新のS/4HANAに刷新して認定のクラウド基盤で運用したりSaaS版のS/4HANA Cloudを使ったりといった方法や、既存ERPの運用をクラウド基盤に移行する方法など、複数の手法が考えられる。フォスター電機の場合は既存ERP資産をクラウドリフトする後者のアプローチをとっている。システムそのものの移行と運用基盤の移行を同時に実行するのは大掛かりになる上、検討事項も多く、移行完了までの時間もコストも膨大になりやすい。この点、後者のアプローチであれば、まずは運用を効率化することで人員やコストに余裕を作り、クラウドシフトに向けたタスクを割り当てることも不可能ではない。

 フォスター電機の中村俊一氏(グローバルコーポレートサポート本部 経営戦略情報室 次長)は「数年前からDX(デジタルトランスフォーメーション)を進める検討を開始していましたが、『攻めのIT』『守りのIT』の両面でオンプレミスのシステム運用に限界を感じていました」とクラウド移行のきっかけを振り返る。

 「ITインフラの柔軟性や俊敏性、拡張性を確保しながらコストを圧縮するため、クラウドファーストでシステムを構築する方針を立てました。各社クラウドサービスを検討した結果、選んだのがGoogle Cloudです」(中村氏)

Photo 図1 フォスター電機のSAP ERPとGoogleサービス導入の変遷(中村氏の投影資料より)

運用負荷を低減するインフラの基本性能を重視 データ活用への展開も視野に

 中村氏は、Google Cloudを選択した決め手を「インフラの基本性能の高さ」だと言い切る。

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