富士通が秘匿化データの流通サービス開始、基盤は独自CaaS

グローバルサプライチェーンやヘルスケア、環境対策など個人や企業、業界を超えてデータを信頼できる形でつなげる必要性が高まっている。富士通は、「Fujitsu Computing as a Service」の新機能として「Fujitsu Computing as a Service Data e-TRUST」の日本国内での先行提供を開始した。

» 2022年10月19日 07時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。

 富士通は2022年10月17日、「Fujitsu Computing as a Service」(CaaS)の新たなサービス機能として、「Fujitsu Computing as a Service Data e-TRUST」(Data e-TRUST)の日本国内での先行提供を同年10月13日に開始したと発表した。第1弾として長瀬産業に提供する。2022年度中には一般提供を開始し、順次世界展開する予定だ。

秘匿化されたデータベース間でのやりとりを制御

 CaaSは、高度なコンピューティング技術とソフトウェア技術を容易に利用できるようにするサービス群だ。先行提供を開始したData e-TRUSTは、セキュアなデータ流通と活用に向けて、富士通のIDYX(IDentitY eXchange)技術やCDL(Chain Data Lineage)技術を実装したトラスト機能群。CaaSプラットフォームで異なるサービスの間や、個人や企業の間の安全なデータ流通と活用に向けたAPI群を提供する。

 技術面を具体的に見ていこう。

 セキュアでオンデマンドな分散データ流通の仕組みと、デジタルIDやeシールといった電子証明機能、ブロックチェーンを拡張したスケーラブルな台帳機能という3つの主要機能によって高度なデータセキュリティを提供し、異なるシステムやサービスの間でのデータ流通の真正性と安全性を保証する。

 流通するデータの発行元や所有権、真正性の証明と合わせて、データ取引の証跡を改ざん不能な形で管理できる。デジタル取引に必要な個人や企業に関わる情報を認証し、金融や製造、流通、医療分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進するとしている。

 Data e-TRUSTの主な特徴は次の3つだ。

  1. トラストなデータ流通と活用の場:個人や企業ごとに秘匿化された分散データベースの間で、連携したいデータの項目をきめ細かく制御する。個人情報のやりとりに関しては、本人の同意を得た上でデータを送信することで、個人や企業をまたがるセキュアでオンデマンドな分散データ連携を可能にする。個人や企業は、自らのデータを管理した上で複数の企業やサービスに渡すことで、流通先やプライバシーを制御できる。これらの機能により、データのオーナーシップや情報開示のガバナンスを強化する
  2. デジタル証明:IDYXは、複数の企業などに分散している個人のIDや属性情報などを、企業や個人の間で安全に流通できるようにする技術だ。活用するデータが正しい情報であり、かつ改ざんされていないことを保証する。これによって、デジタル情報に対する電子証明書の発行と活用を可能にし、デジタル取引における情報の真正性を確保する。個人のスキルや経歴、企業の実績などのチェックによる認証プロセスの強化や、顧客情報の相互連携による契約手続きなどのワンストップ化、電子ドキュメントやデジタルコンテンツの著作権や所有権の管理といった認証のシーンに対応する
  3. デジタル証跡:CDLは、データやモノの流通過程や加工処理を起源にさかのぼって追跡する技術だ。ブロックチェーンを拡張し、個人や企業をまたがった一連の取引履歴を一元管理する。個人や企業による取引や活動の証跡を残し、改ざん不能な形で管理できる。デジタル取引履歴を各事業活動の健全性や社会貢献の証拠として活用可能にする

 先行導入した化学メーカーの長瀬産業は、Data e-TRUSTを同社の化学品ドキュメントの配布管理サービス「DocuValue」に適用する。DocuValueは、サプライチェーンの煩雑で複雑な化学品ドキュメントの配布管理に関する課題を解決するクラウドサービスだ。Data e-TRUSTによって、利用企業の配布情報の秘匿化管理と企業間でのセキュアな情報連携の仕組みを実現するとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ