富士通、NEC、NTTデータの最新受注状況から探る 今後のIT市場はどう動くかWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2022年11月14日 12時45分 公開
[松岡功ITmedia]
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NECとNTTデータは今後のIT市場動向をどうみているか

 NECが2022年10月28日に発表した上期の受注状況は、グローバルを含めた全体が2021年同期比16%増となった。国内ではエンタープライズが同15%増、社会公共が同14%増と好調に推移した。社会基盤も同4%増と堅調だ。ネットワークサービスでは2021年同期から横ばいだった。全体で見たITサービスも同11%増と2桁成長を遂げている(図2)。

図2 NECの各分野における2022年度上期の受注状況(NECの決算資料)

 同社の受注状況について、同社の藤川 修氏(執行役員常務兼CFO)はオンライン会見で次のように説明した。

決算会見を行う藤川 修氏(執行役員常務兼CFO)

 「エンタープライズでは、流通・サービス業向けの大型受注をはじめ旺盛な需要が継続している。社会公共では、都市インフラをはじめ、公共・医療向けが好調に推移した。社会基盤は2021年度第2四半期の大型受注の反動減があったものの、上期では増加を維持した。ネットワークサービスは上期で横ばいだが、高速通信規格の5Gの受注が拡大したことで第2四半期は2021年同期比10%増となった」

 藤川氏は、景気後退の懸念とIT市場動向の見通しについて、次のように語った。

 「世界経済の動きについては、欧米の中央銀行による金融引き締めをはじめとしたさまざまな懸念要素から、減速する可能性があるとみている。一方、日本のIT市場については今のところ総じて堅調に推移しており、世界経済が減速しても当面はあまり影響を受けないのではないか。そうした見通しの根拠となっているのが、DX需要の拡大だ。ここにきてDXに本格的に取り組むお客さまが増えてきたと実感しており、関連する受注が非常に好調に推移している。当社としてもそうしたニーズにしっかりと対応したい」

 NTTデータが2022年11月7日に発表した上期の受注状況は、合計で2021年同期比3.6%増の1兆1947億円となった。分野別に見ると、公共・社会基盤(中央府省・地方自治体・ヘルスケア・テレコム)が2021年同期比603億円減で20.4%減、金融(銀行・保険・証券・クレジット)が同408億円減で19.2%減、法人(製造・流通・サービス)が同125億円増で8.0%増、海外が同1277億円増で28.0%増だった(図3)。

図3 NTTデータの各分野における2022年度上期の受注状況(NTTデータの決算資料)

 上記のうち、国内では公共・社会基盤と金融が2021年同期比で減少したが、いずれも2021年同期にあった大型受注の反動で、同社は「通期業績予想に織り込み済み」だとしている。

 この受注状況について、同社の本間 洋氏(社長)は都内で開いた会見で次のように説明した。

決算会見を行うNTTデータの本間 洋氏(社長)

 「受注高は2021年同期に国内事業で大型案件を獲得したことから、その反動減はあるものの、海外事業では案件獲得と為替の影響により増加した」

 今後の景気後退の懸念とIT市場動向の見通しについては、次のように語った。

 「さまざまな動きが取り沙汰されているが、企業や行政におけるITやデジタルへの投資については、日本をはじめグローバルでも引き続き堅調に推移するとみている。既存の基幹システムの更新需要も活発で、しかもそれらの案件では新たなデジタル技術を積極的に取り込む動きが数多く見受けられる。さらに、新しい商品・サービスやビジネスモデルの創出に挑むお客さまも増えてきている。今後もIT市場はデジタル化の流れとともに旺盛な需要があると思う。それをどこまで拡大できるかは、IT人材不足をどれだけカバーできるかにかかっていると考えている」

 以上が、最新の決算における3社の受注状況と、それを踏まえて今後の景気後退の懸念とIT市場の見通しについて各社に聞いた内容だ。

 筆者が最も印象強かったのは、「DX需要の力強さ」が異口同音に語られたことだ。磯部氏の発言についての印象は先に述べたが、藤川氏も本間氏もDX需要が拡大しつつあることを、実感を込めて強調していたのが印象的だった。

 今後の世界経済の混乱や国内景気の後退については、かなり信ぴょう性がありそうだ。DXに取り組む企業にとっては、これからやってくる経営環境の変化が生き残りを賭けた試金石になるかもしれない。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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