トヨタ自動車が「市民開発」力を強化してDX推進

トヨタ自動車が社内DX推進の柱の一つとする「市民開発」を拡大する。CoE(センターオブエクセレンス)を立ち上げ、市民開発支援教育やガバナンス体制も確立する。

» 2022年12月12日 15時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 トヨタ自動車はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の柱の一つである「市民開発拡大」のための人材育成を強化する。アバナードが2022年12月7日に発表した。

CoEの立ち上げと技術支援でトヨタの市民開発拡大を支援

 トヨタ自動車は市民開発をDXにおける柱の一つに据えている。市民開発とは、業務に精通した従業員がノーコードやローコードなどのソリューションを活用し、自律的にデジタル化を推進することで業務を変革していく取り組みだ。

 トヨタ自動車は市民開発の浸透に向けて、デジタル変革推進室主導で技術コミュニティーを立ち上げ、ノーコード/ローコード開発に関する技術的なノウハウ共有のための情報発信や、相互支援によるQ&A対応といった支援活動を推進してきた。

 同社が開発プラットフォームとして採用したのが「Microsoft Power Platform」だ。デジタル変革推進室の永田賢二氏は、同プラットフォームの特徴であるアプリケーション開発のリードタイム短縮に期待しているという。

 「これまで業務アプリ開発には、予算化や計画立案、システム会社への発注、開発というプロセスを経る必要があるために年単位で時間がかかることが常識だった。各部署が自らアプリ開発をすることで利用開始までのリードタイムが劇的に短縮できる」(永田氏)

 社内でノーコード/ローコード開発への関心が高まるにつれ、技術コミュニティーを活用する参加者が増え、2021年7月頃には参加者は3000人を超えた。一方で、参加者増加に伴ってIT技術に疎い初心者も多くなり、一部の参加者の負担になるという課題も発生した。

 こうした状況の解決と、全社活動として受け入れられつつあった市民開発拡大の支援に向け、Microsoftパートナーのアバナードが技術支援の仕組みづくりをサポートすることになった。具体的には社内DX推進の「CoE(センターオブエクセレンス)の立ち上げ」をサポートし、「市民開発支援教育とガバナンス支援」を提供した。

 市民開発支援教育では、トヨタ自動車の市民開発者とアバナードとの技術相談会を重ねた。2022年8月には蓄積したナレッジを数百単位で共有する「技術紹介セミナー」を実施した。また、永田氏が中心となって進める市民開発の普及活動も支援している。

 ガバナンス支援では、市民開発者拡大に伴って製作されたアプリケーションの統制など、セキュリティ、ガバナンス面の仕組みの整備やライセンス管理などを支援した。さらに、拡張サービスとして、市民開発では担いきれない大規模案件など、個別に予算化して進める開発案件も支援した。

 こうした取り組みの結果、アバナードが支援を開始した2021年11月から8カ月後の2022年7月末時点で、技術相談会は1200回以上開催され、参加者の60%以上が中級レベルにスキルアップし、アクティブな市民開発者数は2845人拡大した。

 今回のアバナードとの協業について、永田氏は「Power Platform技術相談会をはじめとした支援によって、当社内で広まっている市民開発が技術面で補強され、ITスキルが底上げできたと実感している。個々のアプリ開発においては、ユーザーエクスペリエンスまで踏み込んだ支援を受け、システムを利用するだけだった従業員が、より良い業務アプリを自律的に提案、開発できるようになりつつある」と語った。

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