日本政府が進める「ガバメントクラウド」。最大の山場は地方自治体がうまく移行し活用できるかどうかだ。政令指定都市である神戸市の事例を基に考察したい。
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日本政府が行政のDX(デジタルトランスフォーメーション)として進めている「ガバメントクラウド」。中でも筆者が注目しているのは、全国に1741存在する地方自治体の業務システムのガバメントクラウドへの移行と活用だ。特に自治体サイドの視点からみて何が勘所になるのだろうか。
そんな折り、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)が2023年4月20〜21日に幕張メッセ(千葉県)で年次カンファレンス「AWS Summit Tokyo 2023」を開催した。
初日の基調講演で、政令指定都市としていち早くガバメントクラウドへの移行を進めている神戸市長の久元喜造氏は同市の取り組みについて説明した。その内容が非常に興味深かったので紹介し、地方自治体の業務システムのガバメントクラウドへの移行と活用について考察したい。
デジタル庁によると、ガバメントクラウドは「中央政府や地方公共団体、準公共団体分野向けのデジタル施策推進のための共通のクラウドサービス利用環境」のことだ。「クラウドサービスの利点を最大限に活用して迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムの実現を目指す」としている。中央政府および地方自治体が主要業務を2025年度末までにガバメントクラウドへ移行する計画だ。AWSのサービスは、このガバメントクラウドの一つとして2021年10月に採択されている。
今回のAWS Summitでは、久元氏の前に初代デジタル大臣で自民党デジタル社会推進本部長を務める平井卓也氏が登壇し、ガバメントクラウドの意義について次のように話した。
「ガバメントクラウドは、これまでの国全体のデジタルインフラをクラウドベースに替えるという壮大な取り組みだ。地方自治体といっても政令指定都市から小さな村までさまざまだ。自治体によって人材の問題や仕事の優先順位などが異なる。その違いをガバメントクラウドにおいてそれぞれの自治体が自らの意思で反映できるようにする。一方、共通化できる業務はガバメントクラウドにおいて標準化し、総合的な国全体のアーキテクチャをつくっていきたい」
さらに平井氏は「そうしたクラウド利用環境を整備して、地方自治体はアプリケーションベースで独自のサービスを自由にどんどん展開して、それぞれの地域の活性化に役立ててもらう。これが、ガバメントクラウドの基本的な考え方だ」と強調した。
平井氏に続いて登壇した久元氏は「デジタル社会の実現に向けた神戸市の取り組み」と題して、「データに基づく政策立案」(EBPM)、「審査自動化による業務改善」「ガバメントクラウド先行事業参画」およびそれら全てに関わる「デジタル人材育成」といった4つの観点で説明した。ここでは、ガバメントクラウドに加えてデジタル人材の話を取り上げる。
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