「崖」転落目前 成長のカギはベンダーに振り回されずにどう時間を作るかだ「第三者保守は塩漬けではなく先行投資」

「2025年の崖」問題までいよいよ残り数年となった。対策を急がなければならない状況だが予算ややるべき施策の優先順位付けに苦慮する企業も多いことだろう。この問題に対して第三者保守で注目された企業が、新たに「コンポーサブルIT(ERP)」を提案しているという。詳細を聞いた。

» 2023年06月28日 11時00分 公開
[原田美穂ITmedia]

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 「企業の基幹業務のトランザクション、つまり受注から入金消し込みまでのプロセスって、50年前も同じことをやっていたはずです。今後10年やそこらで変わるものではありません。それにもかかわらずベンダーの都合で期日までにアップグレードしなければ保守を提供しないというのは、いま事業環境の変化に大急ぎで対応する企業にとって困難な要求です。『SAP ECC 6.0』のサポート切れに代表される問題に対応に迫られている企業も多いことと思いますが、この問題は企業の事業成長の視点からすれば最もプライオリティが高いものではありません。ベンダーの都合に振り回されてIT投資をしているわけです」

 こう語るのは日本リミニストリート代表取締役 脇阪 順雄氏だ。Rimini StreetはERPなどのビジネスアプリケーションやデータベースアプリケーションの保守をベンダーに代わって低コストで提供する「第三者保守サービス」で成長してきた。同社は第三者保守サービスの提供はそのままに、新たに「コンポーサブルIT(ERP)」をコンセプトとした複数のソリューションを提供する。

日本リミニストリート代表取締役 脇阪順雄氏 日本リミニストリート代表取締役 脇阪順雄氏

第三者保守、コンポーサブルなIT(ERP)は「ベンダー都合から自由になるための手段」

 同社が提供する第三者保守サービスは、ベンダーのサポートが終了した古いアプリケーションに対して同社が独自にサポートを継続する仕組みだ。

 最低でも15年間の保守をベンダーに代わって提供する。すぐにアップグレードやシステム移行を進められない企業にとっては保守費用の支払いのみで既存のアプリケーションを使い続けられることから、段階的なシステム刷新を長期スパンで検討しやすいなどの利点がある。

 その他、第三者保守サービスはSAP ECC 6.0のサポート終了が2027年とされることから、古いSAPシステムを利用する企業のもう一つの選択肢として検討の俎上(そじょう)に上がることも多い。「SQL Server」や「Oracle Database」「PostgreSQL」など、ビジネスアプリケーションを支えるデータベースやJavaアプリケーションも同様に保守サポートを提供する。グローバルでエンジニアを抱えており日本にもサポートエンジニアを置き、24時間365日体制でサポートする。

Webブラウザや最新OSでの動作保証、マネージドサービスまで事業を拡大、企業のIT資産を保護

 「日本ではすでに350社ほどが顧客になっています。中でもいま私たちのプロダクトでよく売れているのが各種アプリケーションとミドルウェアの対応、下位互換性の問題を解決する『Rimini Connect』です」(脇阪氏)

 この数年、同社が提供するサービスはビジネスアプリケーションの互換性だけでなく、アジリティのあるIT施策を実現するための環境整備を支援するソリューションにまで拡大している。同社は2022年にセキュリティソリューション「Rimini Protect」、WebブラウザやOS、メールサーバの仕様変更に伴う互換性を保証する「Rimini Connect」の提供を開始し、2023年3月にはビジネスアプリケーションの運用を代行するマネージドサービス「RiminiOne」を発表した。

 Rimini Connect には最新のWebブラウザに対応していない古いWebアプリケーションに対して、アプリケーションベンダーに代わって表示や動作を保証する「Rimini Connect for Browser」や最新OSに対応していないアプリケーションの動作を保証する「Rimini Connect for OS」などが含まれる。「Rimini Connect for Email」は「Microsoft Exchange Online」のベーシック認証廃止問題に対応するサービスだ。

ベンダーのサポート廃止はメンテナンスコストの問題もあるが、中には認証技術の変更など、セキュリティ面を考慮したものもある。これらについて、独自に動作を保証するとなるとセキュリティ対策が気になるところだ。これについて脇阪氏は「セキュリティソリューション 『Rimini Protect』はそうした懸念を払拭(ふっしょく)するために作られたプロダクトです」と説明する。

コンポーサブルなIT(ERP)は成長に向けた投資に集中するための手法

 同社は現在、これらのソリューション群を使った「コンポーサブルなIT(ERP)」への切り替えを提案している。巨大な「一枚岩」のERPシステムの変化しない領域は継続して利用しながら新しい仕組みを取り入れていくアプローチだ。

 「コンポーサブルなIT(ERP)を推奨する理由は、変化の速度が速くなっているから」と脇阪氏は説明する。

 いままでのERPシステムはオールインワンだからこそ情報に一貫性があり、利便性があるとされてきた。だが、それが急激な変化に対応するにはシステムが大きく、対応に時間がかかりすぎる要因になっているというのだ。

 「私たちの提案は、いまある基幹システムのトランザクション部分、例えば受注や出荷指示、請求書を発行して入金消し込みをする、という一連の流れは今後も変化しないのであればそのまま使い続けましょう、というものです。変える必要がある部分を切り出して変えていくために、変えない部分はそのまま使い続ければいい」(脇阪氏)

 顧客側で変化する部分としては顧客体験の革新などが該当するだろう。

 「顧客側の変化は急激に起こるため、急いで対応しなければなりません。Amazonで注文した品物がすぐに届く体験を多くの方が当たり前のように受けていますが、同じ仕組みを企業が構築するには倉庫や3PL事業者との緊密な連携が必要になりますからシステムの改修や開発が必要になります」(脇阪氏)

 脇阪氏は、まず目前の経営課題にITリソースを集中させた上で、「基幹業務を支えるシステムはそのまま退避させておけばいい」と説明する。

 変化への対応の視点から見れば、リアルタイムに近い情報を把握して意思決定をしたいという要望も多いのではないだろうか。そう考えるとトランザクション部分の刷新も求められるのではないかとの疑問が残るがこの点について脇阪氏は、「少なくとも経営層の意思決定に時間単位、分単位のリアルタイム性は必要はありません。日次で情報を確認できれば十分に判断できます。製造業大手でグローバルに展開している企業といえども、経営情報の把握と判断という意味では時間単位で変化を追うことはないでしょう。POSや生産工程などの管理をしている方々はリアルタイムのデータを求めていると思いますが、それらはエッジで管理すれば十分」とした。

 「最近はRimini Protectへのお問い合わせも増えています。『Oracle Database 11g』などの古いデータベースで多数のバージョンが混在している場合は全てを一気に切り替えるしかありませんが、システム停止を伴うこともあり、アップグレードは非常にハードルが高い作業になります。そこで取り急ぎサポートが切れている古いデータベースについてはRimini Protectでパッチ適用を継続しておきたい、というご要望です。データベースアプリケーションの最新機能を使いこなして運用している企業は数えるほどしかないでしょう。多くが基本的な機能を使って運用しています。システムを止めてまでアップグレードをどうしてもしたいわけではない企業も多いのです。加えて私たちはPostgreSQLのようにコミュニティーで開発されているオープンソースソフトウェアのデータベースアプリケーションについてもサポートしています。Javaアプリケーションについても同様に対応しており、こちらも問い合わせが増えている状況です」(脇阪氏)

第三者保守で稼働するアプリケーションの運用を受け持つマネージドサービス

 RiminiOneには運用マネージドサービスやコンサルティングサービスが含まれる。脇阪氏によると、この中でも「コンサルティングサービスは日本で非常に伸びている領域」だ。

 「マネージドサービスについては価格競争力よりもエンジニアリング力と総合的な対応力で評価されています。問題が発生してもマネージドサービスでわれわれが全てを見ている場合は切り分けも対応も全て私たちが手掛けられます。私たちのエンジニアリングチームは『変なことができる技術者』を多く抱えていると自負しています。他のSIerで『無理だ』とされた要求もなんとか実現してしまうことも案外と多く存在します」(脇阪氏)

 同社は第三者保守やRimini Connectを使ったシステムの運用に関心があるものの、自社内での運用が困難と感じる企業向けに同社がシステム改修や運用をまるごと受け持っており、コンサルティングサービスでは、これらに加えて、インボイス制度への対応や分社化に伴うERPの分割、『Salesforce』導入にあたっての業務分析や設計といった上流工程の支援も手掛ける。

 「現在、日本国内では約350社が私たちの顧客。そのうち1社が現在私たちのRiminiOneをトライアルで利用していただいています」(脇阪氏)

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