DX支援事業は範囲が広いことから「エコシステムがカギを握る」と言われる。KDDIは通信キャリアとしてDX支援事業に注力している。どんな戦略なのか。そこにはDX支援事業の「エコシステムづくり」におけるヒントがありそうだ。
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「これからは通信キャリアがDX(デジタルトランスフォーメーション)のプラットフォーマーとして重要な役割を果たしていく」
こう話すのは、KDDIで法人向けDX支援事業を担う藤井彰人氏(執行役員 ソリューション事業本部 グループ戦略本部 副本部長)だ。KDDIが最近、DX支援事業に注力していると聞き、取材を申し入れたところ、藤井氏に話を聞く機会を得たので、今回はKDDIが通信キャリアとしてDX支援事業とエコシステムづくりの在り方を取り上げたい。
冒頭の発言は何を意味するのか。藤井氏は次のように説明した。
「ITとDXの利用形態の違いを考えると、かつてITはコンピュータシステム上でのアプリケーションソフトウェア利用を指す場合が多かった。だが、DXを推進するようになってインターネットおよびクラウドからアプリケーションをサービスとして利用する形になってきた。そして、使用する端末もPCからスマートフォンが主体になってきた。こうしたITからDXへの変化は、スマートフォンの普及をきっかけに始まった。KDDIは通信キャリアとして、そうした事業を早くから展開してきた。これからは私たちがDXのプラットフォーマーとして重要な役割を果たしていく」
決意表明とも受け取れる発言だ。さらに、「プラットフォーマーにとどまらず、アプリケーションなどのソリューションをその上でどんどん展開していくことによって、お客さまのDXを総合的に支援していきたい」と力を込めた。
KDDIが法人向けDX支援事業に本格的に注力し始めたのは、現在推進している中期経営計画(2022〜2024年度)からだ。同社はこの中期経営計画で「5G」による通信事業の進化と、通信を核とした注力領域の拡大を図る「サテライトグロース戦略」を推進しており、金融やエネルギー、地域共創、LX(ライフトランスフォーメーション)とともに、DXを注力領域の一つとして挙げている(図1)。
そのため、DX支援事業の推進体制を整備し、2022年4月にビジネス開発やコンサルティング、DXサービス企画、システム開発を行う「DX推進本部」を設置した。同年5月にはDXを専業とする中間持ち株会社としてKDDI Digital Divergence Holdingsを設立した。同年7月には同社の下でクラウドベースのシステム開発やサービスデザイン、アジャイル組織変革コンサルティングなどのケイパビリティを持つ会社の共同体「KDDI Digital Divergenceグループ」を始動した。藤井氏は、KDDIの今後の法人向けDX支援事業拡大を担うKDDI Digital Divergence Holdingsの社長 兼 CEOも務めている。
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