経営トップはDXについてどう考え、何を重視しているのか。ビジネス、マネジメント、テクノロジーの3点について、IBMのCEO調査から考察したい。
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企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が部分最適でなく全体最適を目指した経営改革の取り組みであるこという認識はだいぶ広まったようだ。業務や業種など分野を限定した「〇〇DX」を「部分最適だ」と指摘する声もあるが、それを採用する企業にとって全体最適を目指した取り組みであるならば、どんどん進めるべきだと筆者は考える。
ただし、企業の経営トップがDXについてどう考え、何を重視しているかは注視すべきだ。経営トップが全体最適を見据えていることが非常に重要だからだ。
IBMが世界30カ国を超える24業種3000人(うち日本は165人)のCEO(最高経営責任者)を対象に、「AI(人工知能)時代におけるCEOの意思決定」に関してインタビュー形式で調査した結果「CEOスタディ 2023」(調査期間:2023年3月〜5月)を発表した。その日本語版について、日本IBMが2023年8月9日にオンラインで記者説明会を開催した。その中に経営トップのDXの捉え方について興味深い内容があったので、今回はその話を考察したい。
説明役を担ったのは、日本IBMの村田将輝氏(常務執行役員 テクノロジー事業本部長 兼 AIビジネス責任者)、瀬良征志氏(IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー部門責任者 パートナー)、田村昌也氏(IBMコンサルティング事業本部 エンタープライズ・ストラテジー パートナー)の三氏だ。以下、日本IBMを「IBM」と表記する。
今回のCEO調査で筆者が注目したのは、次の3つの質問に対するグローバルおよび日本の回答結果だ。
1つ目の質問は「今後3年間、貴社にとって最重点事項は次のうちどれか」というものだ。図1が、グローバルにおける2023年と2022年を比較した結果だ。
特に目につくのは「生産性や収益性」が昨年の6位から1位に上昇したことだ。この影響もあって「顧客体験」は昨年の1位から3位に下がった。また、今年から加えた項目である「テクノロジーのモダナイゼーション(最新化)」と「サイバーセキュリティとデータプライバシー」は、それぞれ2位と4位にランクインし、40%以上のCEOが最重点事項に挙げている。
これらを考え合わせると、CEOは今、DXの取り組みの中で、技術面ではモダナイゼーションやサイバーセキュリティ、データプライバシーを重視して対処しながら、ビジネスでは生産性や収益性、顧客体験の向上に最重点を置いていることがみて取れる。
この質問に対し、日本の調査結果を取り出してグローバルと比較したのが図2だ。IBMは「日本のCEOはサイバーセキュリティの重要性にあまり興味を示していない」とコメントした。最も目立つ動きなので、その指摘はごもっともだ。
筆者が気になったのは、日本だけでなく世界でも1位に挙がった「生産性や収益性」を「最重点事項」としているものの、グローバルと日本でその割合に差があることだ。日本のCEOの方が生産性や収益性についてより切迫感があるということだろう。
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