ユーザー企業の「コスト最適化」は2023年の最大のトレンドとも言われるが、AWSによると、その傾向は終息しつつある。それでもAWSの売上高成長率がMicrosoftやGoogleよりも低い理由はどこにあるのか。
この記事は会員限定です。会員登録すると全てご覧いただけます。
Amazon Web Services(AWS)は2023年8月3日、2023年第2四半期(同年6月30日締め)の売上高が前年同期比12%増の221億ドルに達したと発表した(注1)。同部門の2022年第2四半期の売上高は対前年同期比33%増の197億ドルだったため、成長率は1年間で21ポイント下落したことになる。
ハイパースケーラーの中でも大きな市場シェアを抱えるAWSだが、規模が拡大するにつれて成長率は低下している。2023年第1四半期の純売上高の成長率は前年同期比16%増にとどまっている(注2)。ただし、AMAZONは「AWSの事業は安定し始めている」としている。
Amazonの北米部門は2022年第2四半期に営業赤字から回復したが、海外部門は赤字が続いている。同社の営業利益は前年同期比で6%減少した。AWSの第2四半期の営業利益は54億ドルで、2022年の57億ドルから減少した。それでもAWSによる利益は依然としてAMAZON全体の利益の大部分を占めている。
顧客企業がクラウドへの支出も含めたコスト削減を模索したことで、AWSは経済危機を感じ始めた。
しかし、Amazonのブライアン・オルサフスキー氏(シニアバイスプレジデント兼CFO《最高財務責任者》)によると、コスト最適化の傾向は緩和しつつある。
2023年8月3日に実施された決算説明会でオルサフスキー氏は「この四半期で見えてきたのは、顧客のコスト最適化の傾向はまだ続いているものの緩やかになってきており、大口顧客の多くはコスト最適化を過去のものにしつつある可能性があるということだ(注3)。現在は、(新規のアプリケーションやプロセスを利用する)新しいワークロードや新しいビジネスへの移行が進んでいる」と語った。
クラウドやSaaS(Software as a Service)プロバイダーがIT支出に対する顧客の厳しい監視の目にさらされる中、コストの最適化は2023年における最大のトレンドとなっている(注4)。調査会社のSynergy Research Groupのジョン・ディンズデール氏(チーフアナリスト兼リサーチディレクター)によれば、AWSには収益面でも明るい兆しが見えている。
「2022年第2四半期以来、AWSは四半期ベースで収益を24億ドル伸ばしている。そのうちの約8億ドルは最初の四半期に達成したものだ。これは既に巨大になっている事業基盤に加えられた大きな数字だ」(ディンズデール氏)
マクロ経済の逆風やMicrosoftやGoogleの攻勢もあったが、Amazonはハイパースケーラーのトップの座を譲らなかった。Synergy Research Groupによれば、同社は引き続き市場シェアの3分の1を占めている。
「純粋に計算上の観点から言えば、AWSの方がはるかに規模が大きいため、AWSがMicrosoftやGoogleと同じ成長率を生み出すのは難しい」(ディンズデール氏)
(注1)Amazon.com Announces Second Quarter Results(amazon)
(注2)AWS revenue growth slows as cloud market expands(CIO Dive)
(注3)Amazon.com, Inc. (AMZN) Q2 2023 Earnings Call Transcript(Seeking Alpha)
(注4)Salesforce flags waning demand for long transformation projects(CIO Dive)
(初出)AWS growth slows again, but customers are moving to add workloads
© Industry Dive. All rights reserved.