ヤンマーが従業員による市民開発推進で成果 業務改善意欲を維持する秘訣は

有志頼みの業務改善の取り組みを全社に展開するには幾つかのハードルがある。ヤンマーホールディングスはどのように従業員全体のモチベーションを維持しながらスキル向上を推進しているのだろうか。

» 2023年10月11日 08時00分 公開
[山口哲弘ITmedia]

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 ヤンマーホールディングスが従業員による市民開発の推進をグループ全体に拡大させている。どんな仕掛けで従業員の改善意欲を維持させているのだろうか。

草の根の「業務改革コミュニティ」をグループ全体のナレッジに転換

 ヤンマーホールディングは、デジタル戦略を進める中でITシステムを利用する従業員同士が情報発信や相談ができる場としてコミュニティ活動を立ち上げた。活動が本格化したのは2022年7月。社内で開発したアプリケーションの事例紹介などを通じて情報を交換してきた。その間、コミュニティ活動に参加する従業員は当初の約20人から約350人に拡大した。ただし、ヤンマーグループは国内外に事業体が多く、文化醸成の面から誰でも気軽に参加できる土台作りが課題になっていた。

 従来、草の根的な活動だったDX(デジタルトランスフォーメーション)推進コミュニティを本格的にグループ全体に展開するに当たり、ヤンマーホールディングスが利用したのが、アバナードが提供する「Avanade Flexible Support」だ。

 Avanade Flexible Supportは「Microsoft 365」やクラウド型CRMサービス「Dynamics 365」などの活用に関する施策支援やサポートを時間課金制で提供するサービスだ。アバナードはヤンマーホールディングスの課題解決に向けてAvanade Flexible Supportを活用した「Microsoft Power Platform」関連のトレーニングを提案した(注)。

注:アバナードが2023年9月29日に発表したプレスリリースによる。



データ分析やアプリ開発の未経験者を初級、中級レベルに引き上げる

 アバナードの提案を受け、ヤンマーホールディングスがAvanade Flexible Supportの利用を開始したのは2022年9月だ。まず、「Microsoft Power Apps」「Microsoft Power Automate」に関する初級者と中級者に向けたトレーニングや「Microsoft Power BI」に関する初級者トレーニング、海外メンバー向けトレーニングを実施した。

 Microsoft Power Platformの未経験者を初級者へ底上げし、チームでコラボレーションしながら開発を進められる中級者の育成まで体系的なカリキュラムが整ったとしている。

 ヤンマーホールディングスはアバナードについて、海外拠点で展開できる点や、提案力、対応力といったサービス提供の質を評価しており、Avanade Flexible Supportの拡張性と柔軟性を持った教育が可能な点が導入の決め手になったとしている。

 ヤンマーホールディングスのデジタル戦略推進部では「毎月、継続的なトレーニングを受講できることが安心感と動機付けにつながり、海外拠点も現地任せにせず一緒に取り組んでいく体制が構築できたことが成功につながった」と分析している。

 同社は今後、初心者を初級者、中級者へ育成していくことがコミュニティの価値と捉え、コミュニティが分断しないよう事例発表会などの成功体験の共有に取り組んでいく予定だ。

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