図3に示された3つの重点項目からビジネス上の問題とニーズに関する要素をピックアップすると、「安全性・安定性・災害対策」「低遅延のクラウド接続」「スピードと柔軟性」「サイバーセキュリティのリスクを伴う老朽化したインフラ設備とソフトウェア」経済安全保障政策」「IT人材不足」「ESG」が挙げられる。
キンドリルジャパンではそれらに対するソリューションへのアプローチとして、「グリーンエネルギーをサポートし、ハイパースケーラーとの接続性に優れた強固なデータセンターを持つこと」「さまざまなデータを活用した障害防止と、消費電力を監視する運用ツールを使用すること」「データを海外へ持ち出さずに日本国内で使えるようにすること」「インフラ設備およびソフトウェアを永続的かつ安全に更新し続けること」を挙げた。これらについては、ユーザー企業においても自らのITインフラを整備する上でチェックポイントになるだろう(図4)。
上坂氏は自らの説明の最後に、次の2つを訴求したい点として挙げた。
上坂氏の発言で最も印象深かったのは、「アウトソーシングが始まって30年。ITインフラは今、転換期を迎えている」との見方だ。では、アウトソーシングというビジネス形態はこれからどうなるのか。質疑応答で聞いてみたところ、同氏は次のように答えた。
「システムの運用や保守などをITベンダー1社に委託するというこれまでのアウトソーシングに代わり、システムに関わるITベンダーがそれぞれパートナーとなってエコシステムを形成し、共通に利用するプラットフォームを通じたas a Serviceのビジネス形態になるのではないか。ITベンダー1社が運用を丸ごと請け負うアウトソーシングの時代はこれから変わるだろう」(上坂氏)
アウトソーシングを主力ビジネスとするキンドリルジャパントップの発言だけに興味深い。ただ、共通プラットフォームによるパートナーエコシステムが形成されるとしても、誰がそのまとめ役になるかがポイントになる。キンドリルジャパンはITインフラサービス会社として当然その役目を担おうとするだろう。大手システムインテグレーター(SIer)も「自分たちの役割」とばかりに前面に出てくるはずだ。
また、ここまでの議論はハイブリッドクラウドが主流になることを想定しているが、もしパブリッククラウドが多くを占めるようになれば、ハイパースケールのクラウドサービスベンダーがまとめ役として乗り出してくるだろう。
こうした動きを見据え、ユーザー企業としては自らのITインフラの状況に応じて最も頼りになるパートナーを"目利き"で探す必要がありそうだ。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身
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