新たな生成AI機能で注目を集めるNetSuite 日本市場では先行き不透明か記者の視点

「NetSuiteの導入企業を指数関数的に増やすことが目標」と日本オラクルのカントリーマネジャーは話す。だが、現実は簡単ではなさそうだ。

» 2023年11月15日 07時00分 公開
[関谷祥平ITmedia]

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 企業資源を一元的に可視化し、経営の合理化を進めることを目的にERPに注目が集まっている。市場に多くのベンダーが存在する中で、近年特に勢いに乗っているのがグローバルで3万7000社の導入実績がある「Oracle NetSuite」(以下、NetSuite)だ。

 2023年でNetSuiteは25周年を迎え、日本市場に参入して18年が過ぎた。同社はNetSuiteの強みとして「海外展開のしやすさ」「商慣習や法規制への適応」などを強調し、主に中堅・中小企業をターゲットにしている。

 グローバルで3万7000社もの顧客を持つ同社は日本市場でも18年にわたりビジネスを展開してきた。現在はどれ程のビジネス規模へと成長したのかが気になる読者も多いだろう。

筆者の質問にNetSuite代表の返答は? 明確な市場拡大の展望は無しか

 日本オラクルは2023年11月13日に「Oracle NetSuite事業戦略説明会」を開催した。同説明会には同社の三澤智光氏(取締役 執行役 社長)に加え、渋谷由貴氏(NetSuite事業統括 カントリーマネジャー)と、導入事例企業であるタナベコンサルティンググループ(以下、TCG)の藁田 勝氏(専務取締役)、空飛ぶ車やドローンビジネスを手掛けるSkyDriveの佐野琢也氏が登壇した。

 NetSuiteに関する話を主に行ったのは渋谷氏だが、Oracleが2023年10月に米国で開催した「Oracle SuiteWorld 2023」の記者セッションの内容と大きな変化はなかったので、本稿では割愛する。

渋谷由貴氏

 同説明会を通して渋谷氏が強調したのは、「NetSuiteに追加されたAI機能が日本企業の課題を解決する」ということだ。NetSuiteには生成AIアシスタントの「NetSuite Text Enhance」や、NetSuite全体にわたるAI機能「NetSuite Enterprise Performance Management」(EPM)、そしてNetSuiteユーザーが他のユーザーとパフォーマンスを比較できるアプリケーション「Benchmark 360」などの追加が発表され、業界の注目を集めている。

 では、NetSuiteは日本市場でどれ程シェアを伸ばし、今後はどのような成長計画を立てているのだろうか。筆者が渋谷氏に聞いた質問はこうだ。

 「グローバルで25年、日本で18年がたちました。世界では3万7000社まで導入企業が増えたとのことですが、日本市場におけるこれまでの成長率や現在の導入企業数、今後の成長率目標など、示せる数字があれば教えてください」

 渋谷氏はこの質問に対して明確な言及は避け「導入企業数は“3桁”です。今後の目標としては“指数関数的に”導入企業を増やすことです」とコメントした。

 先述したが、NetSuiteの強みは海外展開のしやすさや海外の法規制への対応、成長するスタートアップ企業も利用できるスケーラブルな構造などだ。実際に説明会に登壇したSkyDriveの佐野氏は「今後上場を目指している」とコメントしており、「NetSuite導入の決め手は」という筆者の質問に、TCGの都築伸佳氏(コーポレート本部 執行役員)も「今後、TCGは海外進出を考えており、NetSuiteはグローバル展開に強いという特徴を持ちます。また、ワンプラットフォームであるNetSuiteであれば、データの可視化や分析も容易です」と話した。

 「中堅・中小企業が海外展開をするならNetSuite」だが、どれほどの企業が海外進出を狙っているのだろうか。日本政策金融公庫が2023年6月1日に発表した「中小企業の海外展開と国内回帰に関する調査」(有効回答数:3790社)によると、海外展開を果たした企業は全体の18.0%で、海外展開を行っておらず、関心もない企業は71.3%に上った。

 NetSuiteが日本市場シェアを伸ばすには、「海外挑戦する企業」の増加が不可欠だ。同社はいかにして導入企業を指数関数的に伸ばすのか。今後に注目したいところだ。

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