P&Gは生成AIをどう使っている? 35のユースケースから見えた「推奨ポイント」CIO Dive

AIに長年積極的に投資してきたP&G。同社は2023年2月から独自開発した生成AI「chatPG」を導入している。他社よりもいち早く生成AIを本格導入したP&GのCIOが生成AIを活用する上で推奨するものとは。

» 2023年12月05日 08時00分 公開
[Lindsey WilkinsonCIO Dive]

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CIO Dive

 世界的な消費財メーカーProcter & Gamble(以下、P&G)は、同社独自の生成AI(人工知能)ツールを展開している。同ツールは既製の生成AIツールと同様の機能を持ち、知的財産の保護対策に注力しているという。

自社開発の生成AIを「35以上のユースケース」に利用

 P&Gは、同社が「chatPG」と呼ぶ独自の生成AIツールのβ版を2023年2月に導入して同年9月に正式に立ち上げた。同社のヴィットリオ・クレテッラCIO(最高情報責任者)は「われわれは試験的に取り組んでいるだけではない。chatPGを社内データで補完しているユースケースは35以上ある」と、同年10月17日に実施されたインタビューで「CIO Dive」に語った。

 P&GにはAIに積極的に取り組んできた歴史がある。クレテッラ氏によると、同社は2022年夏にクラウドエンジニアを支援する基盤モデルに基づいたbotを導入した。対話型生成AIツール「ChatGPT」が登場して他企業が生成AIブームに乗り始めた頃、P&GはさまざまなAIツールを実験し、試験的に導入していた。

 chatPGのテキスト生成モデルはOpenAIのAPIを使って構築されている。プロンプトから得られる情報が他のモデルを訓練したり一般に公開されたりしないように、同社は保護機能を追加した。

 クレテッラ氏は「少なくともここ数年、ML(機械学習)を含むAIの能力はビジネス戦略の一部になっている。生成AIはもう一つの大きなチャンスと考えられている」と話す。

 同氏によれば、これまでMLを含むAIが関わるユースケースは非常に限定されていたが、生成AIの登場によって恩恵を受けられる労働者の数は飛躍的に増えた。P&Gの目標は、新しく入社した従業員の育成やコールセンターのオペレーター支援などにおける生産性を向上させ、従業員と顧客により良い体験を提供することだ。

 生成AIの導入に乗り出した他企業と同様に、P&Gは適切なユースケースについて従業員を教育したいと考えている。同社は、このテーマに関する10分間のトレーニングセッションの受講と、受講後に生成AI使用に関するポリシーに署名することを従業員に義務付けた。

 「生成AIモデルがどれほど強力でも、説明責任や成果、コンテンツが従業員次第であることは間違いない。生成AIによって作成されたコンテンツや下書きを従業員がレビューすることは常に重要だ」(クレテッラ氏)

「AIファクトリー」が目指す 開発プロセスの簡素化と全社的なスケール

 クレテッラ氏は、自身や他のITリーダーの役割は「AIの能力」と「ビジネスにおけるAIの意味」を結び付けることだと考えている。

 クレテッラ氏は「現実にはAIが人間に取って代わることはない。人間のスキルとツールの能力の化学反応を促進するために必要なことをしなければならない」と、2023年10月17日に米国フロリダ州オーランドで開催された「Gartner IT Symposium/Xpo 2023」のセッションで語った。

 同氏が「AIファクトリー」と表現する仕組みはグローバルビジネスの80%で使用され、ソリューションの展開スピードを10倍にするという。「MLモデルの開発プロセスを簡素化し、全社的にスケールするためのプラットフォームだ」(クレテッラ氏)

 P&Gは、AIファクトリーの仕組みを活用して、さまざまなバージョンのモデルをテストし、地域ごとに異なる要件に合わせてより生成AIモデルをより簡単に調整できるようにした。「私のリーダーシップはAIファクトリーのために多額の資金を投資することには発揮されない。私が推奨したいのは、第一に、MLと開発プロセスにおけるユーザーの悩みを特定し、自動化することだ」(クレテッラ氏)

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