伝え聞く限り、40%以上の企業リーダーがビジネス課題の一つに「リモート及びハイブリッド作業における良好な関係構築」を挙げています。3Dのデジタル空間を活用すれば、空間対話や共存、没入体験を生み出せます。そしてついに「Microsoft Mesh」がTeamsで活用できるようになります。
Microsoft Meshでは、Copilotがユーザーの「その時の気分」に合わせてアバターの洋服を設定します。場所を問わずに世界中の仲間たちと同じ空間で仕事ができると聞くと「未来感を表現した古い映画」を思い出す読者もいるでしょう。これらの作業はTeamsの「表示」メニューから「イマーシブスペースオプション」を選択するだけです。数回のクリックで2次元会議を3Dに変換できます。
「会議の参加者人数」「会議の雰囲気」に基づいて、Copilotが3D空間に適当な会議室を用意します。50インチモデルと85インチモデルで利用できるようになった「Surface Hub 3」があれば、ハイブリッドチームも会議をより円滑に進められるはずです。
近い将来、「Unity」とMicrosoft Meshで開発した職場環境をTeamsに持ってくることが可能になるかもと考えるとワクワクします。チームメンバーが各自のポテンシャルを最大限発揮するのに適した環境だと言えます。クリエイティブな業務に従事する方も、自宅から仲間と協力しながら新たなアイデアを出せるようになります。また、スポーツのスタジアムを簡単にバーチャルな環境で利用できるようになるかもしれません。
MicrosoftのAIについては、DX 365 Lifeの第5回、第8回、第10回、第11回で最新情報を紹介しましたが、Microsoft Igniteはまさに「AI祭り」でした。
イベント全体で100以上の発表がありましたが、営業担当者向けの「Microsoft Sales Copilot」、インダストリー向けの「DAX Copilot」、ナレッジワーカー向けの「Microsoft 365 Copilot」、業務ユーザー向けの「Copilot in Dynamics 365」、Power Platform、開発者向けの「GitHub Copilot」、セキュリティ管理者向けの「Microsoft Security Copilot」、そして「Bing AI Chat」までがリブランドされてCopilotになると発表されました。
キーノートでは「MicrosoftはCopilotの会社になる」といった発言もあり、筆者も「主体的な働き方をするために、人間とAIが共に働く時代に入った」と再認識しました。
Microsoft 365 copilotは、電子メールやファイル、会議、チャット、カレンダーなどをはじめとする「Microsoft 365」のあらゆるコンテンツとコンテキストを蓄積する「Microsoft Graph」に加え、「Microsoft Word」(以下、Word)や「Microsoft Excel」(以下、Excel)、「Microsoft PowerPoint」(以下、PowerPoint)、「Microsoft Outlook」、Teamsなどの「Microsoft 365アプリ」、自然言語を活用してアクセスが可能な「大規模言語モデル」、検索クエリを「Microsoft Bing」に送信し、Webページや画像などのリンクに関する検索結果も取得できる「Web Search」から構成されます。
Copilotは未来のAIアーキテクチャです。Copilotはアプリを通じてプロンプトを受け取ると、グラウンディングによるアプローチでプロンプトを処理し、実用的な回答を示します。Microsoft Graphや外部のERP/CRMなどを呼び出してビジネスコンテンツとコンテキストを取得し、Copilotがプロンプトを改善してから大規模言語モデル(LLM)にプロンプトを送信します。
今後は「責任あるAI」がセキュリティやコンプライアンスを確認し、プライバシーを見直してコマンドを生成します。最後にCopilotがユーザーに応答を送信し、アプリにコマンドを返します。Copilotはこれらを繰り返して処理し、高度化と効率化を実現します。Copilotによって、1カ月で約10時間の作業時間を短縮した事例もあります。
Microsoft 365領域のCopilot活用で印象に残ったのがExcelです。Microsoft Igniteのデモでは、CopilotをExcelに活用するだけでなく、ここに「Python」なども合わせてクオリティーの高いグラフを瞬時に作り出しました。バックオフィス業務の効率化につながります。
その他のデモでは「Microsoft Copilot Studio」(以下、Copilot Studio)で「旅費交通費の予算を聞くプログラムを書く」というものもありました。Copilot Studioで専用プラグインを作るために、まずは「SAP」を参照してOpen AIにデータを送るフローを定義しました(図14参照)。計算式は自然言語でCopilotが示してくれるので、担当者はリリース処理を行うだけです。
デモの中でTeamsに質問を与えると、図15の回答が返ってきました。経理の担当者に聞かなくてもこの回答が得られれば、あとは予算の申請をきちんとしておけば基幹システムや会計パッケージにタイムリーに記帳できるので信ぴょう性を高められます。
読者の中には、デモ以外の方法で生産性向上や業務改善を実現するシナリオを思い付いている方もいるでしょう。例えばPFR(提案依頼書)への回答や問い合わせ対応などです。また、「Microsoft Fabric」と合わせれば社内外のナレッジデータベースを活用した新たな価値創造が可能になるでしょう。
ここからは、Microsoftのビジネスアプリケーション領域で注目のCopilotを紹介します。既に世界13万の組織がDynamics 365とPower PlatformのCopilotを活用しています。
「Copilot in Dynamics 365 Guides」(リンククリックで「YouTube」に遷移)であれば、ユーザーは自然言語やジェスチャーでCopilotと対話し、音声やホログラムとして情報を得られます。下図のように工場現場などでヘッドセット型デバイスを装着して操作すると、Copilotが機械点検や検査、修理、分解などの手順を示します。作業員の業務効率化と作業品質向上につながります。
このPV(リンククリックでYouTubeに遷移)の最後に「Work Orderをクローズしてください」というコメントがあります。これは音声で基幹システムの業務を処理しているシーンです。
CRM領域のCopilotはいわゆる「攻めのDX(デジタルトランスフォーメーション)」の援軍です。「Customer Insight」(旧「Dynamics 365 Marketing」を含む)や「Sales」「Customer Service」の各アプリが密に連携し、これまで以上の顧客分析が可能になります。
Dynamics 365のCRM領域のデータは全て「Microsoft Dataverse」にあるので、アプリ間のデータ活用やリアルタイムマーケティング分析を充実させやすいといえます。
「Microsoft Copilot for Sales」は、CRM(SalesforceやDynamics 365)と生成AIを活用してOutlookの電子メール作成時間を削減し、顧客との効率的な対話を実現します。
PowerPointでは、Copilotに指示を出してWordで作った提案書からプレゼンテーション資料を作成できます。Wordの文書から数クリックでPowerPoint資料に変換することも可能です。50ドル/1カ月の追加で利用可能になるということで、時間原価2500円の方なら月の業務を約3時間削減できれば投資対効果があります。
CRMとOutlookの連携で「メール作成」「アクション提案」「過去取引の要約」「営業機会創出」などが期待できます。
Teamsの会議要約機能があれば、会議に遅れても内容をキャッチアップできます。また、議論の趣旨に沿って会議が進行しているかを参加者全員で確認すれば、会議の質を高められます。
Salesforceを利用中の方も、Outlookと合わせた活用にはメリットがあり、Microsoft Fabricを活用して外部にあるデータを収集しそれを含めてCopilotが動作してくれます。自社に合った独自のCopilotを作成し、販売することも可能です。最高のオペレーションができる組織がR&Dの一部の役目を果たすことも可能になります。
筆者は現在、Technosoft Automotiveで「顧客の購買体験を変革する」というミッションのもと、仕事をしています。特にこのCDP(Customer Data Platform)とCustomer Journey Orchestration(CJO)領域の改善は欠かせません。「顧客を知る」ということが全ての企業にとって最重要課題の一つだからです。
コンテンツの肝であるデザインで欠かせない「スタイル管理」や、コンテンツの中身である「コンテンツのリライト」などをCopilotがサポートすることで、マーケティングの生産性が高まります。
Dynamics 365の商談状況や結果に基づいて、Dynamics 365 Customer Insight(Marketing)に顧客や案件の評価を戻せる機能は以前から多くの要望がありました。
Copilotが顧客のプロファイリングを精度高く行えば、営業担当者は案件受注に直結する業務に多くの時間を使えます。
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