DXを進める企業にとってITモダナイゼーションは必須の取り組みだが、課題も多い。どんな課題を乗り越えなければならないのか。PwCコンサルティングが実施した最新の2023年調査から探る。
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DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める企業にとって、基幹業務システムなどのモダナイゼーションは欠かせない取り組みだ。だが、実際には苦労している企業も多い。何が課題なのか。
PwCコンサルティング(以下、PwC)が2023年12月14日に発表した「2023年DX意識調査―ITモダナイゼーション編」(注1)でそうした課題が浮き彫りになった。その内容が興味深かったので、本稿で取り上げたい。
同調査は、年商500億円以上の国内企業でITモダナイゼーションに関与している課長以上のマネジャー500人を対象に、Webを通じて2023年9月に実施したものだ。発表同日に行われた記者説明会では、PwCコンサルティングの中山裕之氏(上席執行役員パートナー)と鈴木直氏(ディレクター)が説明役を務めた。
中山氏は調査結果の解説に先立って、ITを取り巻く環境とITモダナイゼーションについて「環境がここ数年、大きく変化している中で、ITモダナイゼーションは従来のレガシーシステムをダウンサイジングしようというITだけの話ではない。ITに関連する組織や人材、プロセスの在り方を時代に即して再定義することが必要になっている」との見解を示した。
その背景には、ITに関する考え方が従来と現在で変わってきたことがある(図1)。
この図でとりわけ注目されるのは、ITの位置付けが従来は「業務の効率化など支援的な位置付け」だったのが、現在は「ITそのものが企業の競争優位性の源泉」になっていることだ。つまり「ITモダナイゼーションはITだけの話ではない」のである。
なお、同調査では、ITの俊敏性と弾力性が重要だという仮説に基づき、「アジャイル開発」「パブリッククラウド」「クラウドネイティブ技術」の3つの活用状況に着目して、「ITモダナイゼーション成熟度」を設定している。成熟度として、3つの活用状況の進捗(しんちょく)に応じて、全てにおいて全社的に活用している「先進」、全てにおいて一部ではあるが本番で活用している「準先進」、いずれにも当てはまらない「その他」の3つに分類している。
ITモダナイゼーション成熟度をみると先進が8%、準先進が53%、その他が39%だ(図2)。
この結果で興味深いのは、準先進が2022年の調査(29%)から倍近くに増えたことだ。この変化を捉えて中山氏は、「2023年は日本企業のITモダナイゼーションとして、潮目が変わった年となった」との見方を示した。
なぜ、こうした変化が起きたのか。中山氏は調査結果から、「アジャイル開発とクラウドネイティブ技術の活用が進んだ。アジャイル開発によって不要な開発の削減や業務とITの一体化などの効果が表れた。クラウドネイティブ技術でも俊敏性や生産性の向上、工数およびコストの削減などの効果が見られた。そうした効果を体感することにより、次の取り組みが進んでいると推察される」との見方を示した。
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