ChatGPTで「オリジナル穴埋め問題集」を作ってみよう「AIが卵より安くなる時代」に向けて

ビジネスパーソンには学ばなければならないことがたくさんあります。あなたはどんな教材で勉強していますか。「これをこういうふうに学びたい」という細かなニーズにピッタリ合う問題集をChatGPTで作る方法とは。

» 2024年01月31日 07時00分 公開
[永田豊志ITmedia]

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この連載について

AI(人工知能)を仕事で利用するのが当たり前になりつつあります。高価だったAIがコモディティ化して「卵よりも安く利用できる」近い将来、「副操縦席」に追いやられないために、われわれは何をすべきでしょうか。

AIをビジネスで生かすべく日々実践している永田豊志さんが、ビジネスパーソンの生産性向上に役立つ情報と、そこにとどまらない、将来を見据えた挑戦のためのヒントをお届けします。

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 2024年初の寄稿になります。2023年はまさに「生成AI(人工知能)のビッグバン」ともいうべき広がりを見せた年でした。

 こうして記事を書いている最中にも、さまざまな企業が独自の生成AIを作り出しています。それらの生成AIは気の遠くなるような量のデータを学習し、秒単位で加速度的に賢くなっています。こう考えると、ちょっと怖い気もしますね。

 しかし、「AIを自分の生活や仕事にどうやって生かすか」を考えるのはこれからの時代を生きる私たちにとっては不可欠です。というわけで、今回は自己学習のためのAI活用というテーマで考えてみます。

「欲しい問題集」が本屋で見つからない

 「ChatGPT」をはじめとする最近の生成AIや大規模言語モデル(LLM)には、「自己学習機能」とよばれる機能が備わっています。

 かつては機械学習(ML)といって、AIに学習データを読み込ませることで精度を上げていました。ただし、この学習方法は学習データを用意する手間がかなりかかってしまうのが難点です。

 しかし、最先端のAIに備わっている自己学習機能は、大量のデータを読み込んだ後に自分で学習データを作り出し、それを自分で解いて"勝手に"賢くなるという夢のような仕組みです。

 学習したデータは言語の違いを超えて回答することができます。前回、「翻訳の仕事はAIにかなり奪われるのではないか」と書いたのはこうした背景があります。

 今回は、「役割を与えるとその道のエキスパートとして回答してくれる」「日本語と英語など言語をまたぐ依頼にも対応できる」「問題文と回答文を作ってくれる」「解説をしてくれる」というChatGPTの強みを生かして、自己学習のための問題集を作ってみます。

英語と日本語をまたいだ問題を作成できる

 筆者の息子はインターナショナルスクールに通っているのですが、ScienceのTermReport(成績表)があまりにも残念な結果でした(笑)。今回はこうしたリアルなニーズに基づいて問題集を作ります。

 細かいニュアンスを英語で伝えるのは面倒なので、ChatGPTへの依頼文は日本語で書くことにしました。

 まずは、次のような依頼文(プロンプト)を入れてみます。

 「あなたは英国インターナショナルスクールの高学年でサイエンスを担当する教師です。サイエンスの授業で使われるボキャブラリーの理解が乏しい外国人の生徒のために、あるトピックで使われる頻出重要英単語を20個、頻出順で日本語の訳と概要も含めてリストアップしてください」

 すると、次のような文章が返ってきます。

「了解しました。サイエンスのトピックはさまざまありますが、一般的な「生物学」を題材として、英単語とその日本語の訳、簡単な概要をリストアップします。以下に、生物学でよく使われる重要な20個の英単語を頻出順に列挙します。


1.Cell(細胞): 生命体の基本的な構造・機能単位

2.DNA(デオキシリボ核酸): 遺伝情報を含む分子

3.Genes(遺伝子): 形質を決定するDNAの区間

4.Organism(生物): 単一の生命体

(中略)

19.Cell Division(細胞分裂): 細胞が増える過程

20.Habitat(生息地): 特定の生物種が生活する自然環境


 これらの単語は生物学の基本的な概念を理解する上で重要です。生徒さんにはこれらの単語を覚えてもらい、それぞれの意味と関連性を理解することが推奨されます」

 これだけでも、かなり役に立ちそうです。実際にリストアップした英単語を理解したかどうかを試すための問題文も作ってみたいと思います。

 次のような依頼文を追加します。

 「それでは、リストアップされた単語を学習するために、文章中の重要英単語が(    )となっている、『英文の穴埋め問題』を作成してください。(    )に入れるべき解答は、授業で覚えるべき重要な単語になるようにしてください」

 「リストアップされた順に穴埋め問題の解答が並ぶと容易に答えが推測できるので、順番はランダムになるようにしてください。1つの文章の長さは20語前後の短いものとします。このような条件で穴埋め問題を20個作成してください」

 すると、次のような文章が返ってきます。

「もちろんです。それでは、以下の英語の問題文を生徒に提示します。生徒は括弧内に適切な英単語を書き入れます。その後、正解かどうか、スペルミスがあるかどうかを確認し、なぜその答えになるのかを日本語で解説します。


  • The basic unit of life is the (    ).
  • Genetic information is stored in (    ).
  • Plants convert light energy to chemical energy through (    ).」

 実際にこうした内容の問題集が欲しくて探したのですが、書店では見つけられませんでした。自分で参考書や問題集を大量に作れるのはとても便利です。

回答も解説もChatGPTに任せよう

 これらの問題を息子に解いてもらいます。筆者がチマチマと採点するのも良いですが、ついでにChatGPTに回答へのフィードバックももらえるようにプロンプトを作成したいと思います。

 「あなたはこれから実際の生徒に、これらの問題文を英語で投げかけてください。生徒は穴埋め問題の問題文をコピーして、(    )に答えを書き込みます。その回答が正解かどうか、スペルミスがある場合はどこにミスがあるのかを指摘し、正解について『なぜその答えになるのか』を解説してください」

 「ただし、解説自体は日本語で、英単語や文章の意味を日本語で補足説明してください」

 ChatGPTが作った先ほどのような穴埋め問題をコピペして(     )に該当する英語を記入し、ChatGPTに返します。すると、ChatGPTが依頼文に従って正解・不正解判定と、日本語解説を加えてくれます。

“Thank you for providing your answers. Let's review each one:


The basic unit of life is the (cell).

Correct Answer: Yes, you are correct!

解説: 「細胞」は生命の基本単位です。細胞は全ての生物体を構成し、基本的な生命活動を行います。


Genetic information is stored in (gene).

Correct Answer: Actually, the correct term is "DNA".

解説: 遺伝情報は「DNA(デオキシリボ核酸)」に保存されます。遺伝子はDNAの一部で、特定の形質をコードしていますが、DNA全体が遺伝情報を含んでいます。


Plants convert light energy to chemical energy through (light converting system).

Correct Answer: The more accurate term is "Photosynthesis".

解説: 植物が光エネルギーを化学エネルギーに変換する過程は「光合成」と呼ばれます。「light converting system」は光合成の概念を表す言葉ですが、科学的な用語としては「Photosynthesis」が正確です。”

 英語、日本語のバイリンガルでサイエンスを教えられるエキスパート教師を手軽に作成できるのは驚異です。AIに置き換えられる職業として教師が挙がるのも納得です。教師は勉強を教えることだけではなく、人生の目的や社会との共生などをもっと広い範囲について教える仕事になるべきだと筆者は考えています

 有料版の「GPT-4」では、あらかじめ自分で設定して特定分野のエキスパートを作り出し、プリセットとして持っておける「GPTs」機能が使えるようになりました。

 これによって「算数の先生」「国語の先生」といった具合にいろいろなAI教師を作り出し、自分自身だけでなく子どもの勉強を補佐するプラットフォームとして使えるでしょう。

 次回は、最近さらに充実してきたマルチモーダルを活用して、業務効率を上げる方法を紹介したいと思います。

著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)

知的生産研究家、起業家、上場企業の経営者。現在、DX支援クラウドを提供する株式会社ショーケース(東証3909)とリユースモバイル事業を運営する日本テレホン株式会社(東証9425)、2社の上場企業の経営者。

企業経営と並行し、新規ビジネス開発、働く人の生産性向上をライフワークとした執筆、講演活動などを行う。

自著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』(ソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)、『会社では教えてもらえない仕事がデキる人の資料作成のキホン』(すばる舎刊)がある。

著書一覧:https://www.amazon.co.jp/s?k=%E6%B0%B8%E7%94%B0%E8%B1%8A%E5%BF%97

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