「風邪を引いたんだけど」と告げると、一番近いドラッグストアへの道順を教えてくれる――。フォルクスワーゲンがChatGPTと社内の音声アシスタントの統合を進めているという。生成AIに積極的に利用する自動車メーカー各社の取り組みを紹介する。
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自動車メーカーのVolkswagenは、2024年第2四半期から生成AI(人工知能)の「ChatGPT」を車内の音声アシスタント技術に統合する予定だ。同社が2024年1月8日(現地時間)に発表した(注1)。ドライバーはカーナビゲーション(カーナビ)や空調、位置情報やオーディオ、ビデオなどを提供するインフォテインメントシステムを音声で操作できるとしている。ドライバーが一般的な質問をした場合も回答できる。
Volkswagenによると、ChatGPTが車両データやドライバーの質問にアクセスすることはなく、回答内容は即座に削除されるという。
自動車メーカーは、技術トレンドに沿って新しいデジタル機能を追加することに注力している。「Webex」や「Zoom」などのWeb会議システムと提携し、外出先で会議に参加するための機能を導入するなど、ハイブリッドワーク時代のニーズに対応している(注2)。
そして昨今、自動車メーカーはAIに着目している。
Volkswagenは、自動車向けのAIアシスタント技術を開発しているCerenceと提携している。「自動車メーカーの車載アシスタントの基盤として、LLM(大規模言語モデル)に基づく新しいユーザー体験を設計している」とCerenceのステファン・オルトマンスCEO(最高経営責任者)は述べた。
Cerenceの広報担当者は「今のところ、ChatGPTは既存の音声コントロール機能を強化している」と述べた。ドライバーが『かぜを引いた』と伝えると、ChatGPTはかぜ薬を奨め、薬を受け取れる最寄りの店舗への道順を教えてくれるといったことが理論上は可能になる。
ChatGPTは、Volkswagenの車種のうち電気自動車(EV)の「ID.7」「ID.4」「ID.3」に加え、ガソリン車の「Tiguan」「Passat」「Golf」の新型に標準装備される。
自動車メーカー各社は管理負担を軽減して情報を迅速に提供するために、生成AIに注目している。
American Hondaは2023年11月に生成AIを導入した。データインサイトへのアクセスを一般化する5つの戦略の一環として、「Microsoft Copilot」を従業員に広く展開している(注3)。
General Motorsは、「Microsoft Copilot for Microsoft 365」をいち早く採用した(注4)。従業員はMicrosoftアプリの電子メールやWeb会議、その他のコンテンツに基づいた質問し、回答を得ることができる。Mercedes-Benzは従業員のAIのスキルアップのために22億ドル以上を投資し(注5)、世界中の製造拠点でChatGPTの試験運用を2023年7月に開始した(注6)。
「Volkswagenは、社内に生成AIソリューションを広く導入してはいない。しかし、コンテンツや画像のたたき台を生成するなど、さまざまな部署における日常業務を支援するAI搭載ツールを試しているところだ」(Volkswagenの広報担当者)
(注1)World premiere at CES:Volkswagen integrates ChatGPT into its vehicles(Volkswagen)
(注2)Now, you can take that meeting on the road(CIO Dive)
(注3)American Honda’s 5-part strategy to deploy generative AI(CIO Dive)
(注4)Microsoft’s generative AI Copilot to reach enterprises in November(CIO Dive)
(注5)Mercedes-Benz investing over $2.2B in AI reskilling(CIO Dive)
(注6)Mercedes-Benz brings ChatGPT to factories(CIO Dive)
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