富士通がコンサル事業拡充へ 「御用聞き」脱却発言から行動変容について考えるWeekly Memo(2/2 ページ)

» 2024年03月04日 14時45分 公開
[松岡 功ITmedia]
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多くの日本企業にも当てはまる「行動変容」の必要性

 ここで、Uvanceについても少し説明しておこう。正式名称を「Fujitsu Uvance」とするUvanceは、富士通が2021年に立ち上げたグローバルソリューションの事業ブランドだ。「2030年における社会のあるべき姿」の実現に向けて、社会課題をクロスインダストリーで解決するための取り組みを指す。具体的には、サステナブルな社会に移行する「サステナビリティトランスフォーメーション(SX)」をミッションに掲げ、社会課題を解決する4分野のインダストリーと、それを支える3分野のテクノロジー基盤、合わせて7つの分野を重点領域として注力する(図3)。

図3 Fujitsu Uvanceの全体像(出典:富士通の発表資料)

 大西氏はUvance Wayfindersの強みについて、「従来の業種軸ではなく、イシュー(課題)軸でコンサルティングのプラクティス(実践的な方法や事例)を強化する」ことをモットーに、「長年培ってきた業務知見を活用したクロスインダストリーのアプローチ」と「世界中で取り組むR&Dから価値提供につなげるテクノロジー力」の2つを挙げた(図4)。

図4 Uvance Wayfindersの強み(出典:富士通の発表資料)

 コンサルティングの重点領域としては、「13のプラクティスを策定し、それらを有機的に組み合わせて最適な提案と変革の実行を支援する」(大西氏)とのことだ。2024年1月から認定コンサルタントを順次輩出しているという(図5)。

図5 コンサルティングの重点領域(出典:富士通の発表資料)

 コンサルティング人材の拡充に向けても「社会にポジティブなインパクトをもたらすために、スケールにこだわる」(大西氏)構えだ。具体的には、富士通グループの2025年度目標として現在の5倍の1万人体制にする。内訳は、ビジネスコンサルタントを約600人から3000人、テクノロジーコンサルタントを約1400人から7000人に増員する計画だ。人員確保の方法としてはリスキリングで6000人、外部からの採用で3000人、M&Aで1000人を見込んでいる(図6)。

図6 コンサルティング人材の拡充計画(出典:富士通の発表資料)

 Uvance Wayfindersの取り組みについて、Fujitsu Uvance事業を担う高橋氏は「Uvanceによってさまざまな社会課題を解決するにあたって、その提供価値をお客さまにしっかりと伝えるためには、コンサルティングのケイパビリティが必要だ。社会課題を解決する過程ではクロスインダストリーでの知見やソリューションの提供が求められる。Uvance事業は2025年度目標を7000億円としており、コンサルティングはその達成に向けた重要な要素だ」と述べた。

 Ridgelinezの今井氏も「当社はビジネスコンサルティング会社としてこれまで4年間、独立して活動するとともに富士通とも密接に連携して、お客さまの課題解決に努めてきたという確かな手応えがある。今後もなお一層、内外共に行動変容に結び付くようなアクションや仕組み作りに取り組みたい」との意気込みを示した。

 以上が今回の会見のエッセンスだ。中でも大西氏が説明したUvance Wayfindersの3つの羅針盤の話は、富士通の事業戦略というだけにとどまらず、多くの日本企業にも当てはまる話ではないだろうか。とりわけ、注目したいキーワードは「行動変容」。意識が変わることで行動や習慣が変わることを指す言葉だ。

 会見の質疑応答で、「富士通が取り組んでいる『IT企業からDX企業への変革』はコンサルティングの目から見てどれだけ進んでいるのか」と問われた大西氏は、「山登りでいえば、まだ三合目あたりだ。当社の中で最大規模である国内の事業組織の行動変容が終わっていない。これからそこに取り組んでいく」と答えた。

 大西氏は顧客との関係で「御用聞きからパートナーへ」と変わる必要性を訴えてきた。しかし、顧客対応の最前線では「お客さまの要望にしっかりと応える御用聞きも大事だ」との声も根強い。この点は富士通に限らず、多くの日本企業に通底するのではないか。ただ、御用聞きだけで今後、通用しなくなるのは明らかだ。その理由は大西氏の説明にもある通りだ。とはいえ、企業にとってはこの行動変容が最も難しい。では誰が先頭に立って推進するのか。それこそ、経営トップの役目だろう。

 こうした富士通の取り組みによる考察から、今回は「日本企業は“行動変容”せよ」と訴求しておきたい。

著者紹介:ジャーナリスト 松岡 功

フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。

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