2027年までに従来型オンプレは消滅? 「老朽化インフラの終活」をガートナーが提言

ガートナーの予測によると、2027年までに従来型オンプレミスのITベンダーは市場から消えるという。従来型のオンプレミスインフラが廃止される近い未来に向けて、大企業は何をすべきか。ガートナーが提言する。

» 2024年03月07日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 ガートナージャパン(以下、ガートナー)は2024年3月4日、オンプレミスの将来に関する展望を発表した。「企業は『』インフラストラクチャ(インフラ)のグランドデザイン』を再考する必要がある」と同社は提言する。

2027年までに従来型オンプレのベンダーが消滅

 ガートナーによると、日本におけるユーザー企業のインフラとオペレーション(I&O)に携わる部門の多くでは、今でもクラウドかオンプレミスかを検討し、OSのサポート切れやハードウェアの老朽化のタイミングだけに反応し、個別のテクノロジーを場当たり的に導入し、ハードウェアコストをわずかに削減している状況にある。さらに、I&O部門の外でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進されているという。

 こうした状況を受け、ガートナーの青山浩子氏(ディレクターアナリスト)は次のように述べる。

 「新たなテクノロジーや手法、アプローチに加え、クラウドサービスが選択肢としてある中で、新興テクノロジートレンドによる破壊と革新に伴う市場再編が発生している。I&Oリーダーは、旧来テクノロジーを継続維持するだけの『Oldオンプレミス』から脱し、ビジネスイノベーションに資するプラットフォーム戦略へと進むことが求められている」

 ガートナーは、「2027年までに、オンプレミスを継続しているユーザー企業の70%は従来型のオンプレミス(Oldオンプレミス)のベンダーが市場からいなくなっていることに気付き、途方に暮れる」と予測する。

 Oldオンプレミスのみをサポートするベンダーは市場から消滅しつつあり、国産ベンダーはサーバだけでなく、メインフレームからも撤退し始めている。外資系ベンダーは「Newオンプレミス」(注1) を推進していたり、VMwareのように他企業に買収されてリスタートのフェーズにあったりするなど転換の時を迎えているという。

 ガートナーの亦賀忠明氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリスト)は「こうした状況は業務システムを含めて、社会と経営を支える重要な基幹系システムの将来が不透明になりつつあることを表している。ほとんどの日本企業にとって事態は相当に深刻だ」と指摘する。

 従来の延長としてのオンプレミスを利用しようとしても、それを支えるテクノロジーがなくなるため、ユーザー企業は代替テクノロジーを検討せざるを得なくなる。代替テクノロジーとして最も有力なのはハイパースケーラーだ。しかし、利用するためには新しいスキルだけでなく、時代に即したマインドセットやスタイルが必須になる、とガートナーは予測する。

 亦賀氏は、次のように指摘する。「『ベンダーやシステムインテグレーターが、現在のテクノロジーをこれまでと同様にサポートし続けてくれる』と考えるのは大きな誤りだ。(中略)今後、ハイパースケーラーへの理解は不可欠になるため、スキルの早期獲得に向けた施策の推進や、次世代対応に向けた既存要員の強化が必須になる。世の中が根本から変化していることを理解し、2030年以降の『New World』(新たな時代)に向けて、スーパーパワーテクノロジー(想像を超えたテクノロジー)と新たなテクノロジー人材による力強い次世代のビジネス戦略の立案と展開をスタートする必要がある。そのためには、現在のOldオンプレミスのマイグレーションだけに気を取られるのではなく、次世代のビジネスアーキテクチャまで視野に入れて対応する必要がある」

2027年までに大企業の70%がオンプレミスを廃止

 ガートナーは「2027年までに、大企業の70%において現状維持とコスト削減を主目的とするオンプレミスインフラは廃止される」と予測する。

 オンプレミスの老朽化対応やインフラ更改の際には、コスト削減が重視されている。新規テクノロジーを一部取り込むことはあるものの、現状維持をベースとした機能改善だけではビジネス成果へのインパクトは小さいままだ。

 ガートナーの調査によると、レガシーインフラや旧来のスタイルのオンプレミス環境で長期間使い続けてきたテクノロジーに対して、日本企業のCIO(最高情報責任者)の40%以上が投資を減らす意向を示している。

 「時代の潮流に乗り遅れたまま何も対策を講じないという猶予はもはや許されない。企業は、現状維持を目的とするインフラから、ビジネスの競争優位性に資する、革新的テクノロジーを時流に沿った形で取り込めるプラットフォームへの転換が求められている」(青山氏)

 I&O部門は、従来型インフラの維持戦略において、ビジネス成果に対する有効性の検証と説明責任をより一層求められるようになる。ビジネス部門におけるクラウドサービスの利用意向もさらに高まり、I&O部門がコントロールできない、ビジネス部門主体で導入されたプラットフォームインフラが急増する可能性もある。

 「I&Oリーダーは、オンプレミスの従来型インフラについて一度はゼロベースで考え、企業のビジネス目標やインフラ利用者のニーズに基づいて、どのような価値を提供すべきか、あるいはどのような価値が求められているかを明確にする必要がある。また、老朽化したインフラの『終活プロジェクト』を立ち上げ、システムインテグレーターやベンダーによる提案をうのみにせず、自社のサービス基盤として求められるテクノロジーや手法は何かを判断する必要がある」(青山氏)

(注1) ガートナーは、従来型のシンプルなスタックから構成されるオンプレミスではなく、クラウドネイティブの要素を取り入れた新しいオンプレミスを「Newオンプレミス」と呼ぶ。HCI(ハイパーコンバージドインフラストラクチャ)ベンダーやハイパースケーラーが提示しているハイブリッドソリューションにおけるオンプレミスもここに含まれる。

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