カスタマイズ「マシマシ」になってない? 日本企業の“丸投げ体質”にガートナーが警告

「SIerなどに要望を伝えるだけのユーザー企業」「ユーザー企業の要望に従うだけのSIer」は多い。こうした丸投げ体質の企業に積み上がる負債とは。

» 2024年04月04日 07時00分 公開
[金澤雅子ITmedia]

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 部分的な内製化を志向する企業が増える一方で、「SIerなどに要望を伝えるだけのユーザー企業」「ユーザー企業の要望に従うだけのSIer」は多い。こうした丸投げ体質を改善しない企業は今後、どのような道をたどるのか。ガートナージャパン(以下、ガートナー)がアドバイスする、丸投げ体質を改善するためのカギとは。

丸投げ体質「改善のカギ」は?

 ガートナーは2024年3月28日、アプリケーション開発の内製化やCX(カスタマーエクスペリエンス)の向上といった「アプリケーションの変革」を進めるには、丸投げ体質からの脱却が必要であるとの提言を発表した。

 顧客との接点となるデジタルチャネルの増加や顧客の要望の多様化に伴ってCXを巡る要件が複雑化し、多種多様な顧客関連テクノロジーが必要とされるようになった。

 ガートナーの本好宏次氏(バイス プレジデント アナリスト)は「新しいプラクティスやテクノロジーを根付かせる上で大きな障害になるのは、従業員のマインドセットが変わらないことにある。これはアプリケーション開発の内製化やCXの向上といった変革に取り組む企業の多くが挙げる課題だ。中でも深刻なのは、いわゆる丸投げ体質だ」と指摘する。

 発注側は「やりたいことを伝えるだけ」、受注側は「依頼されたことをやるだけ」という“丸投げ”の姿勢は、事業部門からIT部門、IT部門から外部委託先に連鎖している。

 CXの向上のように部門横断的な推進が重要な施策では、特定部門の要件を実現するためにこの体質が顕在化すると、連携が取れていない個別最適化されたアプリケーションの乱立につながる。エンドユーザーによる市民開発やDX(デジタルトランスフォーメーション)といった、事業部門の主体性が求められる施策の推進においても、テクノロジーやデジタルツールに関する従業員のリテラシー教育ですら、現場のニーズを十分に擦り合わせることなく、IT部門に丸投げされている状況も散見されるという。

 日本企業のアプリケーションやソフトウェアエンジニアリングに関わるリーダーは、古い慣習となりつつある丸投げ体質から脱却し、率先して自らのマインドセットを見直しながら、事業部門と価値を共創するための体制を構築する必要があるとガートナーは強調する。

カスタマイズ「マシマシ」の原因も丸投げ体質

 ガートナーが2023年6月に国内企業を対象に実施した調査によると、ERPパッケージのカスタマイズ率を「20%未満に抑えている」企業は33%にとどまり、「過半数の機能をカスタマイズしている」企業の割合は27%に上ることが明らかになった。アプリケーションに過度なカスタマイズを実施する企業は、運用コストの高止まりやバージョンアップ時の負担の増大など、カスタマイズに起因する課題に頭を悩ませている状況も分かった。

 カスタマイズが増える要因について、ガートナーは「事業部門はIT部門に、IT部門は外部委託先に、現行業務や機能の再現などの要求をそっくりそのまま任せてしまう、いわゆる丸投げの姿勢がある」と分析する。

 近年は、ビジネスの変化に即応するために、パッケージアプリケーション開発の一部の工程で、簡易的な機能拡張といった内製化に挑戦する動きがある。一方で、丸投げ体質を温存したまま内製化を進めると、統制の取れないカスタマイズや機能拡張が繰り返され、技術的負債が積み上がる恐れをガートナーは指摘する。

 「従来の丸投げ体質から脱却し、事業部門とIT部門がともに課題解決に取り組む体制を構築する企業は、カスタマイズを減らすことでパッケージアプリケーションの利用コストを抑えながら、タイムリーに新機能を活用してビジネス価値を創出しやすくなる。そのためには、事業部門とIT部門のフュージョンチームを編成し、プロダクトオーナーを担えるビジネス人材を育成することが重要になる」(本好氏)

 2027年向けて、ERPをはじめとするパッケージアプリケーションにおいて丸投げ体質から脱却した企業は、「カスタマイズを20%未満に抑えることができる」とガートナーは見ている。

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