節約したいのにかえって割高に 「無駄金」を生むクラウド料金プランとは?CIO Dive

クラウド費用を圧縮しようと選んだ料金プランが、実は無駄金を発生させている可能性がある――。SaaSベンダーでさえも選んでいるその料金プランとは。

» 2024年09月26日 12時50分 公開
[Matt AshareCIO Dive]
CIO Dive

 クラウドの利便性は高いが、コスト上昇に悩む企業は多い。

 CloudZeroが2024年8月13日(現地時間)に発表した報告書によると、SaaSベンダーの多くがクラウドコストの管理に苦労している(注1)。

無駄金を生む料金プラン 節約のつもりが割高に 

 しかし、同報告書によると、こうした課題を解決するためのソリューションは、予算にクラウドコストが占める割合が高いSaaSベンダーでさえもあまり利用していないという。それどころか、コストを増加させる可能性のある選択肢を多くの企業が取っている。どういうことなのか、調査結果を見ていこう。

 同報告書によると、クラウドサービスの利用が広がる中で、「クラウド費用の一定割合が使途不明金」「部門の予算にクラウド費用をひもづけるのが難しい」といった問題を多くの企業が抱えているという。

 同報告書では、SaaSベンダーの5社中3社がクラウドコスト管理プログラムを導入しておらず、回答者の約4分の3が「クラウドコストが総売上原価の20%以上を占めている」と答えたことも明らかになった。

 CloudZeroはFinOpsソリューションを提供している。同社のフィル・ペルゴラCEOは報告書で、「SaaSベンダーにとって、クラウド費用は予算項目のトップ3に入るにもかかわらず、ほとんどの企業はクラウドの効率性を管理したり、ユニットエコノミクス(顧客1社当たりの採算性)との関係性を多角的に理解したりするための厳格なプロセスを整備していない」と指摘した。

 さまざまな業種の企業が使用量ベースの課金体系に適応し、コストと価値を結びつけるのに苦労する中で、クラウドコストの高騰がさらに打撃になっている(注2)。報告書によると、クラウドネイティブのSaaSベンダーも例外ではない。

 調査対象企業の10社中9社が、クラウドにかかるコストのうち「最低でも10%はどこで発生しているかを追跡できていない」ことを認めている。コスト管理プロセスを導入している39%の回答者のうち、ソフトウェアコードを最適化しているのは約4分の1にすぎず、部門の予算からクラウド費用を差し引くチャージバックプロセスを導入しているのは半数以下だった。

 企業が多種多様なクラウドサービスや共有リソースを利用したり、複数のクラウドプロバイダーを活用したり、コンテナ化されたワークロードが広がったりすることによって、コストを特定の部門に結び付ける作業は複雑化している。

 どの部門にどのサービスの費用を請求すべきかが明確にならなければ、クラウドを利用する企業は、FinOpsのコスト管理手法として重要な「使用量の最適化」にさえ着手できない。

 また、ほとんどのSaaSベンダーは、クラウドコストを節約しようと、ハイパースケーラーの割引きサービスや一括料金プランを利用したり、サードパーティーの再販プランを契約したりしている。しかし、こうしたサービスやプランを利用することで、必要としている以上のクラウドのリソースを割り当てられる可能性がある(注3)。逆に、「クラウド費用を削減するために、余っているリソースをユーザーによる入札で価格設定する『スポットインスタンス』を定期的に利用している」と答えた回答者は4分の1にすぎなかった。

 テックベンダーが多額のクラウドコストを費やすと、そのコストは「値上げ」という形で顧客に転嫁されがちだ。

 調査会社のForrester Researchによると、米国企業の約80%が過去1年間でソフトウェア価格の上昇に直面した(注4)。経営幹部の多くは、値上げの原因を「AIを含む新しいソフトウェア機能」だと考えている。

 ただし、AI開発がコスト上昇の一因となっている可能性は高いが、LLM(大規模言語モデル)のトレーニングやチューニング、アクセスはクラウドで実施される(注5)。SaaSベンダーがクラウドに過剰なコストを支払っている場合、そのコストは収益を悪化させるか、あるいは製品価格を引き上げることで顧客に転嫁される可能性がある。

 なお、CloudZeroの報告書は、SaaSベンダー700社を対象として調査会社Benchmarkit ITが実施した調査に基づいている。

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