各種業務の代行サービスであるBPOを活用してDXを推進すれば、人の配置のミスマッチ解消などの経営改革を推し進められるのではないか――。DX推進の文脈から見たBPOの可能性について、パーソルグループの新戦略から考察する。
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企業はDX(デジタルトランスフォーメーション)推進とともに、各種業務の代行サービスであるBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)をうまく活用すれば、業務の生産性が向上し、人手不足にも対応し、ひいては経営改革を推し進められるのではないか。そう感じた発表があったので、今回はその内容を紹介しつつ、考察する。
その発表とは、人材派遣・紹介業大手のパーソルグループが打ち出したBPO事業の新戦略だ。これまでグループ内で展開してきたBPO関連事業を再編・統合した形で2024年10月1日に新会社「パーソルビジネスプロセスデザイン」を発足し、BPOをグループの戦略事業として強力に推進するものだ。新会社の代表取締役社長に就任した市村和幸氏は2024年9月26日に開いた事業戦略の記者説明会で、社名の由来も合わせて「ビジネスプロセスを理想的な形でデザインする会社としてお客さまの役に立ちたい」と力を込めた。
市村氏によると、BPOとは「業務プロセスを一括して外部企業に委託するアウトソーシングの一種であり、サービス範囲は、コア事業のパリューチェーン業務全般、コーポレート業務全般と多岐にわたる」。国内の市場規模は「約5兆円で毎年着実に伸びている」とのことだ(図1)。
ただ、パーソルグループが実施した調査によると、BPOの導入率は約2割にとどまった。とはいえ、導入している企業の8割以上が、「経営効率が向上した」あるいは「今後も利用継続・拡大」の意向であることが分かった(図2)。
また、同調査では、BPO未導入の理由として「外部委託する業務範囲の特定・切り分けが難しい」「業務プロセスの可視化・標準化が不十分で切り分けが難しい」などが挙がり、BPOの障壁となっていることも明らかになった。図3がその調査結果で、新会社としてはこれらの課題に対応していくことが、今後の重要な取り組みとなる。
市村氏はパーソルビジネスプロセスデザインについて、「お客さまの課題に応じてコンサルティングやAIなどの最新テクノロジーを掛け合わせたBPOサービスを提供する会社」とも強調した。その上で、「当社の強みは、最適な業務プロセスを構築する『プロセスデザイン力』、チーム管理と最適な人材配置によって現場のパフォーマンスを最大化する『組織および人材マネジメント力』、リスキリングやアップスキリングを中心とした『人材育成力』にある。この3つの力を循環させながら、生成AIをはじめとするテクノロジーを掛け合わせてプロセスを高度化、最適化することでサービスや企業の価値を高め、持続的な効果を創出する」と説明した。
新会社といってもこれまでのグループ内の関連事業を再編・統合した形なので、発足時点で公共や通信、電力、金融などの業界を中心に約1900社の顧客基盤、従業員数1万8000人、年間売上高約1000億円の規模からのスタートだ。そう紹介した市村氏は、「今後の展望として、顧客社数1万社以上、従業員数約5万人、そして売上高も合わせてBPO業界ナンバーワンを目指す。この業界は大手をはじめとして競合がひしめいているが、本気で挑んでいきたい」と意気込みを語った。
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