パーソルビジネスプロセスデザインが手掛ける事業は、「BPO事業」「CX(カスタマーエクスペリエンス)事業」「コンサルティング事業」「BPaaS(ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)・プロダクト事業」の4つから構成されている(図4)。同社としては、各事業が横断的に連携・協働することでサービスの高付加価値化を推進したい考えだ。
また、同社は今回の発表を機に、バックオフィス業務の運用をBPOで支援する中小企業向けオンラインBPOサービス「StepBase」の提供を開始した。バックオフィス領域を中心に多岐にわたる業務を同社の各分野の実務経験者がオンラインで効率的に行うサービスである。必要な業務を必要なタイミングで依頼することが可能なため、人件費を抑えるとともに、従業員が重要度の高い業務に集中する環境を提供することができるとしている。発表資料には利用料金プランも明示されている(図5)。
市村氏は会見の中で、BPOと社会課題について次のような話も披露した。その内容も非常に興味深いので紹介しておこう。
同社は社会課題として「顧客組織の生産性向上」「適切な労働移動の実現による社会生産性の向上」「地方活性化への貢献」「働く人が成長できる環境の創出」の4つを見据えているという。中でも特に重視しているのが2つ目で、「労働移動」がキーワードだ。
労働移動という言葉は政府のレポート「令和6年度 年次経済財政報告」にも、「コロナ禍を経て企業の人手不足感が急速に高まり、少子高齢化と人口減少による労働人口の減少が経済の成長を抑制する要因となっている。こうした中、労働市場におけるリソース配分の効率を高めるためには、人手不足が顕著な領域への労働移動の円滑化は重要な課題だ」と記されている。
市村氏は労働移動の課題として、「イノベーションの影響による産業構造や事業構造の変化に起因する業務や人のミスマッチ」という顧客企業の課題と、「転職への心理的ハードルが高い、スキルが追いついていない、個人の学ぶ機会が少ない」という働く人の課題がある中で、その両方に対して多様な仕事の現場を提供し、仕事およびスキルをアップデートできるようにすることが求められているとの認識を述べた(図6)。
そして、「当社のBPOは『学ぶ』と『実践』を両立できるものだと自負している。BPOによって適材適所に再配置や最適化を図る形の労働移動によって、企業や地域社会の生産性を向上させていきたい」との姿勢を示した。
さらに同氏は図7を示しながら、「労働移動の実現には、産業や職業と就業者間の需給ギャップを高度に解消する必要がある。リスキリングによって習得したスキルを活用できる場所を提供することに加え、仕事自体をアップデートすることで多様な人材が活用できる状態にしたい」と、同社が目指す労働移動について語った。
市村氏の話を聞いて気が付いたのは、これからのBPOは業務形態だけでなく、新たな働き方でもあるということだ。同社のBPOに身を置けば、自らが目指す仕事のプロになるために、自らを磨き上げるチャンスがあると感じた。こうした動きが活発になれば労働移動が円滑になり、人手不足を補うことにもなる。BPOにはそんなことも期待できそうだ。
このようにBPOの可能性について熱心に話す市村氏に、DXとBPOの関係性についてどのように捉えているかを会見の質疑応答で聞いた。前述したように、新会社は「最新テクノロジーを掛け合わせたBPOサービスを提供する会社」なので当然ながら否定的な見方はないだろうが、同氏がどのように表現するかを確かめたかった。すると、次のような答えが返ってきた。
「DXとBPOは非常に相性が良い。いずれも業務プロセスを見直すところから始まり、最新のテクノロジーや適材適所の人材を活用して業務の生産性向上を図る。お客さまにとってはDXやBPOを活用して生まれたリソースを次なる攻めのアクションに投入できる。当社では業務ごとのテクノロジーの活用においてもノウハウを蓄積しており、それをお客さまにインソースすることにも今後、注力しようと考えている」
今後、「DX×BPO」による経営改革を推進する企業が増えるのではないか。そう感じたパーソルビジネスプロセスデザインの会見だった。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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