Google発のAIエージェント間通信プロトコル「A2A」とは Linux Foundationの管理下に：AIニュースピックアップ

Linux FoundationはGoogle開発のAIエージェント間通信プロトコル「Agent2Agent」（A2A）プロジェクトを立ち上げた。A2Aとはどのようなプロトコルで、MCPとの違いは何か。

[後藤大地, 村田知己，ITmedia]

　Linux Foundationは2025年6月23日（現地時間）、Googleが開発したエージェント間通信プロトコル「Agent2Agent」（以下、A2A）プロジェクトの立ち上げを発表した。オープンソースを通じたイノベーションの推進を背景に、安全かつ柔軟なAIエージェント間の通信・協調を可能にする新たなプロトコルとされている。

A2Aとは何か　MCPとの違い

　A2Aは、Googleが2025年4月に開始した共同開発プロジェクトであり、100社以上の主要テクノロジー企業が参画している。このプロトコルは、多様なアプリケーションやデータ基盤を横断して自律エージェントが連携・情報交換できる仕組みを提供しており、エージェントが複数のシステムにまたがって機能することを前提に設計されている。

　Googleと参画企業が定めた設計原則は以下の通りだ。

• AIエージェントが記憶やツール、コンテキストを共有していなくても自然に協力できるようにする
• HTTPやSSE、JSON-RPCなどの既に広く利用されている標準を基盤とする
• エンタープライズグレードの認証と認可をサポートする
• 人間を介しての数時間から数日かかるタスクにも対応する
• テキストだけでなく、音声や動画などの多様な形式に対応する（マルチモーダル）

　AIエージェント同士でサブタスクを委任したり情報を交換したりすることで、単一のエージェントでは解決できない複雑な問題を解決できるようにするという。

　AIエージェントアプリケーションを構築する上で、MCP（Model Context Protocol）とは補完的な役割を果たす。A2Aによって異なるAIエージェントが相互に通信、連携した上で、MCPによって個々のAIエージェントが外部のツールやAPI、リソースにアクセスできるようになる。

A2AとMCPは補完的な役割を果たす（出典：A2Aの公式ドキュメント）

GoogleとLinux Foundation、AI通信標準で協業開始

　Linux Foundationの傘下に入ることで、A2Aは中立性と持続的なガバナンスを確保し、長期的な拡張性と現実的な応用性を伴うプロジェクトとしての地位を強化している。これにより、特定ベンダーへの依存を避けつつ、幅広い開発者層による貢献を受け入れられる体制が整備されている。

　プロジェクト立ち上げに関与したGoogle Cloudの副社長、ラオ・スラパネニ氏は「A2Aが業界全体にとって重要なオープンスタンダードと位置付け、多様なプラットフォームに対応するAIエージェント構築の基盤になる」と述べた。オープンガバナンスの下で進められる共同作業が、イノベーション促進の基礎になるとの認識が示されている。同プロジェクトの立ち上げには大手ベンダー7社が名を連ねた。

　現在、A2Aプロジェクトは「GitHub」で公開されており、さらなる参加者や貢献者の参画が呼びかけられている。オープンな技術エコシステムの中で進展するこの取り組みは、今後のAI活用の在り方に影響を及ぼす可能性が高いことが予想される。